第8章337話:レオン

さらに学園に到着する。


ちょうどレオンがいた。


武器を持って歩いている。


「レオン」


と私は声をかけた。


「あんたは……」


「いま王都が大変なことになっているのはわかりますわね。あなたの力が必要ですの。協力してくださる?」


と私は尋ねた。


するとレオンが聞き返してくる。


「……協力って、何をすればいいんだ?」


「今回のボスはジルガーンという魔物ですわ。そいつを倒すには、あなたの聖剣士としての力が非常に有効ですの」


「聖剣士……」


レオンがぽつりとつぶやき、次いで、私をにらんできた。


「俺を聖剣士になるように誘導したのはあんただよな」


「そうですわね」


「じゃあ、あんた、この状況について何か知ってるってことじゃないのか!? 知ってたから、俺を聖剣士にしたんだろ?」


とレオンが詰め寄ってきた。


レオンの剣幕。


エドゥアルトが、私の盾になるように、レオンとのあいだに入ってくる。


私は答えた。


「あなたを聖剣士になるよう誘導したのは、まさに、ジルガーンせんを想定してのことですわ」


「じゃあ――――」


「しかし、さすがにジルガーンが王都で暴れ始めるとは、予想できませんでした。この状況は想定外ですの」


と私は、正直に告げた。


さらに私は続ける。


「王都と市民を守るためにも、ジルガーンの討伐は不可欠ですわ。ですから、どうか、ご協力をお願いいたします」


私は深々と頭を下げた。


レオンが驚いたような声を漏らす。


貴族令嬢きぞくれいじょうである私が、庶民であるレオンに頭を下げたことが、意外だったのだろう。


「ル、ルチル様……頭を下げるのは、おやめください」


とエドゥアルトが注意してきた。


貴族が庶民を相手に軽々けいけいに頭を下げるものではない。


そんなことをすれば、貴族の権威が落ちるからである。


しかしレオンには、これでいい。


レオンは、ふんぞり返った貴族を嫌っている。


だからこそ、貴族である私が誠意を見せれば、彼はきっと応えてくれる。


「……わかったよ」


とレオンが言った。


「あんたを信じて、協力する。市民のために戦うってのは、俺も賛成だからな」


その言葉に、私は微笑む。


聖剣士せいけんしレオンと聖巫女せいみこラクティア。


これで、ジルガーンと戦うためのカードは揃った。




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