第8章335話:対策2

よし。


だいたいの方針は固まった。


私は告げる。


「リファリネス」


「はい」


「わたくしは果たさなければいけない用事があるので、そのあいだ、アレックスへの対処をお願いできますかしら?」


「もちろんです。……殺しても構わないでしょうか?」


アレックスを殺す……か。


私は婚約破棄をしたかっただけで、そこまでしたかったわけじゃない。


とはいえ、アレックスがここまで暴れてしまったのだとしたら、たとえりにしても死刑だろう。


ならば討伐しても同じことである。


「構いませんわ。あなたの判断に任せます」


「承知しました」


「あと、翼を使っても構いませんわよ」


「……よろしいのですか?」


「ええ。非常時ひじょうじですもの」


リファリネスには、人前ひとまえで翼を使わないように命じてきた。


しかし、吸血鬼としての機動力きどうりょくを最大限に発揮するには、翼を使えたほうがいいだろう。


「わかりました。では、そうさせていただきます」


リファリネスは告げてから、翼をバサッと広げた。


次の瞬間。


王都の空へと舞い上がる。


「いってまいります!」


そうして、リファリネスが空へと去っていった。


飛び立っていくリファリネスの背中を見送ってから、私は告げた。


「さて……わたくしたちは学園に向かいますわよ」


「学園……ですか?」


エドゥアルトが首をかしげた。


このタイミングで学園に向かおうとする理由がわからなかったのだろう。


私は答えた。


「実は、今回現れた敵に、心当たりがありますわ。その"敵"を倒すためには、レオンとラクティアを連れて行く必要がありますの」


「そうなんですね」


とフランカがあいづちを打った。


しかしエドゥアルトが食い下がってくる。


「ですが、先に人々の救助や、避難の支援をしたほうがいいのではありませんか? 我々の助けを必要としている人が、大勢いると思いますが……」


エドゥアルトは騎士だ。


都市の治安や市民の平穏を、第一に考えてきたのが騎士。


だからこそ正義感があり、逃げ惑う人々を見捨てたくないと思っている。


私は告げた。


「エドゥアルト、あなたの気持ちもわかりますわ。しかし、あの"敵"を放置すれば、被害はより甚大になります。ゆえに優先的に片付けなければならないのですわ」


ラスボスを放置すると、より被害は拡大していく。


「……申し訳ありません。わがままを申しました」


とエドゥアルトが謝罪した。


「安心なさい。人々の救援や避難誘導については、国がすぐに対策を講じるはずですわ」


そう言ってから私は学園の方角へと足を向けた。


「では、学園へ向かいますわよ」


私たちは学園への道を駆け出した。




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