第8章316話:殿下と

ティールームに入る。


「ここも久しぶりですわね」


半年ほど訪れていなかった。


ちなみに休学していたときは、メイドを雇い、ティールームの管理をおこなわせていた。


きちんと清掃などもしてもらっていたので、部屋は綺麗である。


以前に利用していたときより綺麗かと思うぐらいだ。


さて……


私たちはくつろぎはじめる。


お茶とお菓子を用意して、雑談をする。


私は、秋学期に受ける講義について、決めなければならない。


なので先輩であるエドゥアルトと、学園に通い続けていたマキに、アドバイスを受けることにした。


エドゥアルトとマキがおすすめの講義を教えてくれる。


私はありがたく参考にさせてもらいながら、コマ割りを決めていく。


――――1時間ほどが経過したときだった。


トントン。


ティールームの玄関扉げんかんとびらがノックされた。


「どなたかしら?」


と私は首をかしげる。


「私が扉をあけます」


とフランカが立ち上がり、扉に向かった。


扉を開ける。


すると、そこに立っていたのは……


(……殿下?)


なんとクラウス殿下である。


アレックスの弟であり、第二王子だ。


久しぶりに顔を見たかもしれない。


「ルチル……ここにいたか」


王子の来訪――――恐縮したマキが立ち上がって、一礼した。


私も立ち上がって、告げる。


「殿下……ようこそお越しくださいました。ご用件は?」


「アレックスの件について、話がある」


「……!」


アレックスのことか。


まあ、いろいろあったからね。


アレックスの弟として、話をしたいということだろう。


私は答えた。


「わかりました。場所を変えましょうか」


「そうだな。そうしてもらえると助かる」


私はフランカとエドゥアルトを連れて、部屋を出た。


個室棟こしつとう】の裏手うらてへと移動する。


フランカとエドゥアルトには少し離れた場所で待機していただくことにした。


クラウス殿下も、取り巻きの護衛を離れた場所に待機させて、私と向かい合った。


「最初に申し上げておきたい。ルチル嬢……私の兄が大変ご迷惑をおかけした。本当に申し訳ない」


クラウス殿下が、目を伏せて礼をした。

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