第8章315話:レオンとの再会

学生窓口がくせいまどぐちへとやってきた。


私は窓口にいた職員に、復学届を提出した。


復学が無事に受理される。


そして職員から、復学後に受講じゅこうする講義を決めておくようにと言われた。


講義か……


嫌いじゃない講義も多いのだが、単位をしっかり確保しようとすると、受けたくもない講義を受けなければならない。


それは面倒だ。


またデュアラリー試験を受けて、単位をパスしてもいいかもね。







学生窓口を立ち去る。


ティールームのある【個室棟こしつとう】へと向かう。


その途中。


ふと私たちの正面に、立ちはだかる人物がいた。


レオンである。


「よう」


とレオンは私に声をかけてきた。


「お久しぶりですわね」


「ああ」


とレオンがぶっきらぼうにあいづちを打つ。


レオンは告げる。


「以前、居酒屋であんたが俺に依頼をしただろ? 古鏡ふるかがみをとってこいって」


「そんなこともありましたわね」


ずいぶん前のことで忘れていたが、レオンには【ホーリスの森】にて古鏡ふるかがみを取ってくるように依頼したのだ。


レオンは古鏡を無事に取ってきたが、私は古鏡を受け取らず、そのままレオンに預かってもらうことにした。


さらに『定期的に古鏡を確認しなさい』とも伝えておいた。


なぜなら古鏡は、レオンを【聖剣士せいけんし】へと覚醒させる効果があるからだ。


いずれじゅくすと、古鏡は光りかがやき、レオンの内なる能力を目指めさせる。


そうすることでレオンは勇者たるチカラを得るのだ。


「あの古鏡ふるかがみ……いきなり光りだしてな。そのあと、俺は不思議な力を得た」


「……!」


私は目を見開く。


そして尋ねた。


聖剣士せいけんしになったということですの!?」


「聖剣士……というのか? とにかく、不思議な力だ。剣を振ってると光のオーラが出たり、聖属性のスキルが次々と使えるようになった」


間違いなく【聖剣士】だ。


聖剣士になると、通常攻撃つうじょうこうげき時に低確率で聖属性が付与される。


剣を振っていると光のオーラが出る――――というのは、まさに聖属性のエフェクトだろう。


「おめでとうございます。あなたは、たぐいまれなる剣士の才能に目覚めたのですわ」


「そうなのか」


とレオンは応じる。


そして尋ねてくる。


「……あんた、わかってて俺に、古鏡を取りに行かせたのか?」


「さて、どうでしょうか」


と私は答えた。


レオンは特に追及してくることはなく、告げた。


「とにかく、このチカラを得てから、すこぶる調子が良い。冒険がはかどっている。だからあんたには感謝を伝えておきたくてな。……それだけだ」


そう言って、レオンは立ち去っていった。


私はその背中を静かに見送る。


――――ラクティアは聖巫女に目覚めた。


――――レオンも聖剣士に目覚めた。


ラスボスと戦う準備が、ようやく整った。


まだラスボスが現れるのはずいぶん先になるだろうが、いつ来ても大丈夫な状態にはなった。


「相変わらず、礼儀や言葉遣ことばづかいがなっていない御仁ごじんですね」


とマキが、レオンの去ったほうを見つめながらつぶやいていた。


私は苦笑しながら、告げた。


「さあ、ティールームへ向かいますわよ」


かくして私たち4人は歩みを再開した。


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