第8章312話:ルーガと2

私は続けて、述べる。


「わたくしは、しばらく結婚などに惑わされず、自由に生きたいと考えておりますわ。政略結婚は、正直もうこりごりです」


今後、誰かと恋愛をすることがあったとしても、政略結婚だけは御免ごめんだと伝えておきたい。


……さすがに今の発言には、ルーガは肯定的ではなかったものの、最終的は以下のように述べた。


「まあ……もともと、お前とアレックスの仲は良くなかったようだしな。そう思っても仕方ないか」


ルーガは、アレックスがゼリスばかりにおねつだったことを知っている。


そのため私がヤキモキしたのだと勘違いしているようだ。


(ま、勘違いしていてもらったほうが都合がいいね)


私はアレックスの浮気じみた行動に激しく嫉妬し、その嫉妬に疲れていた……というシナリオでいこう。


そうして政略結婚にトラウマを覚えたということにすれば、父上も今後、結婚の話は持ち出しにくくなるだろう。


「まあ、結婚の話については、このぐらいにしておこう」


とルーガは告げて、話題を変えてきた。


「今日はもう一つ、お前に話があったのだ」


「なんでしょう?」


「……実は、隣国であるダルリス帝国の動向が、きな臭くなってきている。わが国に敵対的てきたいてきな行動を取るようになってきているのだ」


ダルリス帝国……


なかなか大きい中堅国家ちゅうけんこっかである。


私は尋ねた。


「つまり……また戦争が起こりかねないと?」


「可能性はある。クランネル王国はジルフィンドに勝利したことで、得られるものも大きかったが、しばらくは国力が弱っている。回復するまでの間、諸外国しょがいこくからすればるチャンスでもある」


戦争は勝っても負けても国力は消費する。


一番大きいのは兵士が戦死したことで、単純に戦力が減ることだ。


クランネル王国は戦争が終わって、まだ一年も経っていない。


戦争によって疲弊したクランネル王国を叩くなら今だ……と思う勢力があってもおかしくない。


「もしかすると、またお前にも指揮をってもらうかもしれない。それは覚悟しておいてほしい」


「わかりました。もちろん戦場に立つことにいやはありませんので、いつでも頼ってくださいませ」


「ああ。頼りにしている」


ルーガはそう告げて、微笑んだ。


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