第8章307話:和風要素

そのとき私は、ふいに思い出したことがあって、尋ねることにした。


「あの……シエラ様。実はお聞きしたいことがあったんですの」


『なにかしら』


のエレメント、というアイテムについて、何かご存知ありませんかしら」


秘のエレメント。


メイルデント鉱山の第5層、奥の部屋にあった石碑せきひ


その石碑を起動するには、秘のエレメントが必要である。


以上のことをシエラ様に説明する。


「――――というわけで、転移装置を起動するために、秘のエレメントを探しているんですの」


『なるほど。秘のエレメント、ねぇ……』


「やはり存じ上げませんかしら」


『いいえ。そんなことはないわよ』


とシエラ様が言った。


彼女は続ける。


『秘のエレメントは、とある国に存在するわ』


「とある国」


『……ええと、なんという国名だったかしら。たしかサムライだとか、着物だとか、そういう文化のある国なんだけど』


サムライ。


着物。


それって……つまり。


ノ国……的な?」


『ああ、そうそう。和の文化がどうとか言ってた気がするわね』


シエラ様が肯定した。


この近くにある和ノ国といえば、【織之国おりのくに】がそうだろう。


つまり秘のエレメントは【織之国おりのくに】に存在する、ということか。


『ごめんなさい。あまり詳しいことは覚えていないから、教えられることはそれぐらいしかないわ』


「いいえ……十分、貴重な情報を聞くことができましたわ。ありがとうございます」


『そう。役に立てたなら何よりよ』


とシエラ様が言って、消えていった。


私は視線をベッドの天蓋てんがいへと戻して、ぽつりとつぶやく。


「織之国……か」


グラティール物語は、ファンタジーRPGなので、大部分が中世ヨーロッパ風の世界でできている。


しかし和風わふう要素ようそもちゃんとあり、いくつか和風の国が配置されていたのを覚えている。


(異世界にきてから、一度も和の文化には触れてないな)


温泉とか。


桜とか。


お団子とか。


楽しめそうな要素はたくさんある。


おりを見て、織之国に行ってみようかな。そこまで遠くなかったはずだし)


ちょうど【ルチル領】に隣接りんせつした山々の向こうにあったはずだ。


行くだけならいつでも行ける。


ただ、今は学園を休みすぎているので、まずは学園生活に復帰することを優先したい。


学園生活が落ち着いてきたら、織之国に旅行することも検討しよう。



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