第7章297話:帰還

「ルチル様、いかがですか?」


とエドゥアルトが尋ねてきた。


「……あなたたちも、触れてみなさい」


と私は答える。


エドゥアルトと、フランカがうなずいて、石碑に触れる。


最後にリファリネスが触れた。


エドゥアルトがつぶやく。


「転移……それに秘のエレメント、ですか」


するとフランカが以下のように疑問を口にした。


「いったいどこに転移するのでしょうか?」


確かに、転移先てんいさきが書かれていない。


実際に転移してみないとわからないのだろう。


「どこにつながっているのか……気になりますわね」


と私はフランカに共感した。


こういう転移系のギミックは、冒険心をとてもくすぐられる。


いったい転移した先には何があるのか?


めちゃくちゃ気になる。


「でも、秘のエレメントの入手場所がわかりませんわ」


私がそう告げると、エドゥアルトが言った。


「聞いたこともないアイテムです。どんな代物しろものなんでしょうか?」


すると、フランカも首を横に振って、知らない意思を示す。


一方、リファリネスがぽつりとつぶやいた。


「秘のエレメント……耳にしたことがあります」


「本当ですの?」


と私は尋ねる。


リファリネスがうなずきながら答える。


「たしか、精霊にまつわるアイテムだったかと」


精霊……


それは入手難易度が高そうだ。


しかし、私は精霊であるシエラ様と懇意こんいである。


秘のエレメントについて、シエラ様に聞けば、何かわかるかもしれない。


私は告げた。


「リファリネス、貴重な情報をありがとうございます。もしかしたら、入手の糸口いとぐちが見つかったかもしれませんわ」


「さようですか。ルチル様のお役に立てて嬉しく思います」


とリファリネスは微笑んだ。


「さて、今は石碑を起動できませんし、一度戻りましょうか」


と私は言った。


エドゥアルトたちはうなずく。


かくして私たちは、ダンジョン攻略を終えて、鉱山の入り口へと戻るのだった。






鉱山の入り口に戻ってくる。


途中、リファリネスに奇異きいの目を向ける鉱夫が多数見受みうけられた。


リファリネスにはヴァンパイアということを示すコウモリの翼が生えている。


ゆえに、怪訝けげんの目を向けられるのは無理からぬことであった。


「リファリネス、その翼はしまうことができませんの?」


「可能ですが」


「でしたら、必要なとき以外は、翼を隠しておいたほうがいいと思いますわ。ヴァンパイアだとわかると、恐れる者もおりますから」


「ルチル様がそのようにおっしゃるのでしたら、そうします」


とリファリネスは応じて、翼を収納した。






さて、副都メイルデントへと戻る。


ふたたび市長の邸宅へ訪れた。


邸宅の玄関前げんかんまえで、市長に鉱山のことを報告する。


「なっ……!? 第5層を、もう攻略なされたのですか!?」


と市長は驚愕した。


私はうなずく。


「ええ。第5層のダンジョンボスを制圧して、浄化が終わりましたわ」


「そんな、まさか……1日もかからずに……!?」


あまりのことに、市長は信じられない様子だ。


私は告げる。


「ご自身の目で、お確かめになってはいかがでしょう? 第5層に潜ってみれば、すぐにわかることですわよ」


「そ、そうですね。すぐに確認をして参ります!」


市長は慌ただしくそう告げて、鉱山へと飛んで帰っていった。

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