第7章298話:晩餐

その夜。


私は副都ふくと高級宿こうきゅうやどに泊まった。


石造りの宿である。


就寝の準備を済ませて、ベッドに寝転がる。


石の天井を見上げながら、ふう……と深呼吸を一つ。


(とりあえず、メイルデントで出来ることは全部やれたかな)


はじめての視察。


なかなか上手くやれたのではなかろうか。


第5層の解放によってメイルデント鉱山もしばらく保つだろうし……


つるはしの販売案はんばいあんも提案できた。


衰退の危機にひんしていた副都メイルデントは、ここから業績を改善して、繁栄していくことだろう。


(この調子で、引き続き視察を頑張っていこう)


そう心意気こころいきを固める。


さすがにダンジョン攻略をして疲れていたので、すぐに眠気ねむけがやってきた。


立ち込める睡魔すいまのままに、私は、深い眠りのそのへといざなわれるのだった。





翌朝。


メイルデント鉱山の第5層が解放されたことを、無事に確認し終えた市長が、私の泊まる宿へとやってきた。


市長は大興奮しており、私への多大な感謝をあらわにした。


その結果、夜に、市長の邸宅で晩餐ばんさんがおこなわれることになり、私たちは誘われることになった。


なお、鉱山攻略こうざんこうりゃくのお礼の晩餐ということなので、攻略に関わっていないリファリネスについては、宿で待機してもらうことにした。


――――市長邸しちょうてい


晩餐のテーブルに着く。


今回はエドゥアルトやフランカも同じ食卓に着席する形だ。


並べられた料理は、


高級ワイン、


いろとりどりのサラダ、


複数の種類のパン、


ターキーのごとき大きな鶏肉、


ステーキ肉、


緑色のソースがかかった焼き魚、


リンゴのデザート、


……など。


なかなか豪勢ごうせいなものである。


私は市長と乾杯かんぱいを済ませて、まずはひとくち、鶏肉を食べてみる。


(うん、美味しい)


やわらかいのに、歯ごたえもしっかりある。


あとスパイスがかかっているのか、ぴりっと辛味からみがあった。


悪くない味である。


「お味はいかがでしょうか」


と市長が少し緊張した面持ちで尋ねてきた。


「ええ。美味しいですわ」


「さようですか。それは良かった!」


と市長はホッとしたように微笑んだ。


市長は続けて、告げる。


「メイルデント鉱山の件、本当にありがとうございました。第5層の解放については、こちらでも確認が取ることができました。現在、採掘の手続きをおこなっております」


迅速な対応だ。


私がメイルデントに来たときより、市長がやる気に満ちあふれているように感じる。


未来に希望が持てたことで、モチベーションが高まっているのだろう。


市長が言った。


「ルチル様は英雄であるとうかがっておりましたが、そのように謳われる理由が理解できました。あなたはメイルデントにとっても、英雄であり、救世主きゅうせいしゅです」


「大げさですわ」


「いえいえ、あなたのおかげでメイルデントは救われたのですから。私にとっても都市にとっても大恩人だいおんじんであることに違いありません」


市長がにこにこと笑いながら、ワインをあおる。





――――――――――――――――

お知らせ:


今後についてですが、

第7章、結構長くなってきたので、あと10話ぐらいで終わらせようと思います

そういうわけなので残りの視察についても、ダイジェストっぽい感じでいきたいと考えています





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る