第7章296話:石碑

開ききった扉の先に現れたのは、下へと続く階段であった。


「階段……」


とフランカがつぶやく。


「……やはり第6層でしょうか」


とエドゥアルトが推察を述べた。


私は告げる。


「階段を下りて、チェックしてみましょう。もし第6層がありましたら……攻略せず、いったん引き返したほうがいいですわね」


私たちの戦闘能力を考えると、第5層の突破が限界な気もする。


第6層があった場合は、無理に攻略するのは得策ではない。


しかし、この階段の下に何があるのかは、確かめておきたい。


そう思ったので、私たちは階段を下り始めることにした。


下りる。


下りる。


下りる。


やがて辿り着いたのは一本の通路。


しかし、そこには魔法の光が膜のように展開されており、行く手を阻んでいた。


「これは……通れますわね」


と私は告げた。


この魔法は【限定魔法陣げんていまほうじん】と呼ばれているものだ。


この魔法陣は、ボス部屋の先の通路などに置かれている。


ボスを倒した者しか通過できないようになっている。


これは、ボスの討伐者ではない者が、ボスの討伐報酬とうばつほうしゅう横取よこどりすることを防ぐためだ。


今回、ボスを討伐したのは私たちなので、【限定魔法陣】を素通すどおりすることができる。


逆に、たとえば市長などが後でここにやってきた場合、この【限定魔法陣】を通れず、引き返すしかないわけだ。


「いきましょう」


そう私は告げる。


私、エドゥアルト、フランカは第5層を攻略したパーティーなので、【限定魔法陣】を通ることができる。


しかしリファリネスは通過できるのか気になったが……


どうやらリファリネスも通れるようだ。


ダンジョンボスだったから、特別扱いなのかもしれない。


4人とも無事に、限定魔法陣を通行することができて、奥の通路を進む。


やがて辿り着いたのは、円状の空間だった。


半径30メートルほどの広い部屋。


高さは10メートルぐらい。


中央には3メートルほどの高さの石碑せきひが立っている。


他には何もない部屋だ。


「あれは……石碑でしょうか?」


とエドゥアルトが中央の石碑をいぶかしげに見つめる。


私たちは石碑へと近づく。


石碑の表面には魔法文字まほうもじが刻まれている。


「魔法文字なら……触れたら内容が読み取れるかもしれませんわね」


こういう魔法文字の中には、触れることで情報が読み取れるものがある。


エドゥアルトが告げる。


「危険かもしれません。まずは私が――――」


「いえ、たぶん大丈夫でしょう」


と私は告げる。


ボス部屋の報酬で危険なトラップがあるとは考えにくい。


なので、私はさっそく石碑に触れてみることにした。


すると。


一瞬だけ石碑が紫色に光る。


直後、頭の中に流れ込んできた情報があった。





◆◆◆


転移を発動するには【のエレメント】が必要である


◆◆◆




ふむふむ。


まず、この石碑は転移装置のようだ。


使用すると、どこかに転移する魔法が発動するらしい。


その転移魔法を発動するためには【秘のエレメント】というアイテムが必要みたいだ。

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