第7章292話:ヴァンパイア

うん、特徴的に間違いない。


女のヴァンパイアだ。


そう判断してすぐ、私は考える。


(これは対策が必要そうだね)


ヴァンパイアは非常に強い種族だ。


攻撃力、防御力、速度などの基礎ステータスが全体的に高く、保有している魔力量も膨大である。


一応、力押しで殺すこともできるが、なかなか苦労する相手だ。


なのでヴァンパイアの弱点である聖属性の武器で攻撃するのがセオリーである。


ボス部屋に入ってからやることではないけれど、武器に属性をエンチャントしたいところだ。


「エドゥアルト、フランカ」


「……!」


「はい!」


「一時、戦闘を任せます。少しだけでいいので時間を稼いでいただけますか」


私がそう要求する。


エドゥアルト、フランカは強くうなずいた。


「わかりました!」


「頑張ります!」


エドゥアルトが剣を構える。


フランカがバトルアックスを構える。


私は武器エンチャントのため、錬金術を開始することにした。


そして。


「ギグァアアアアアアッ!!」


ヴァンパイアが、声にならない叫びをあげながら、突っ込んできた。


翼を使って地面すれすれを滑空かっくうしてくる。


悪魔的に伸びたツメで、私に向かって突きを放とうとしてくるが、それを阻むようにフランカが立ちはだかる。


「……ッ!」


フランカがバトルアックスを振り回した。


ヴァンパイアが攻撃をキャンセルして回避する。


そのままヴァンパイアがくるりと空中で回転して、回し蹴りを放った。


「きゃあっ!!?」


その回し蹴りがフランカのこめかみに直撃する。


フランカがもんどり打ちながら床を転がる。


追撃しようとするヴァンパイアに、横から斬りかかるエドゥアルト。


「……!!?」


バフポーションで強化された速度と斬撃が、ヴァンパイアの肩口に傷を負わせる。


ヴァンパイアが顔をしかめた。


怒りのエネルギーが、まるで魔力に反映されたかのように、強力な魔力がヴァンパイアからほとばしる。


ヴァンパイアの周囲の空間が、濃厚な魔力によって荒ぶったように震動する。


「―――――――」


ヴァンパイアが何事かをつぶやいた。


次の瞬間、彼女の両手に、ショートソードが出現した。


二刀流にとうりゅうの剣。


刀身は紫色。


柄には美しい装飾がほどこされている。


本物の剣ではなく、魔力で作った擬似的ぎじてきなソードだ。


錬金術とは違い、強引に魔力を固形化して剣の形をしたもの。


あんなやり方で剣を作るあたり、やはりヴァンパイアは相当魔力の扱いに長けているらしい。


「グガウッ!!」


ヴァンパイアがエドゥアルトに斬りかかる。


右手に持つ剣でエドゥアルトを斜めに切り裂こうとする。


それをエドゥアルトが剣のはらで受けた。


「……ッ!」


相当重い斬撃なのか、エドゥアルトが苦悶くもんの顔を浮かべる。


さらに左の剣がエドゥアルトを襲わんとするが……


そこにフランカが迫る。


フランカのバトルアックスがいだ。


またもやヴァンパイアにヒットする。


しかしかすり傷だ。


(エドゥアルトとフランカだけでも善戦ぜんせんしてるね)


と私は思った。


けど……さすがに決定打けっていだに欠けるか。


やはり聖属性せいぞくせい武器での攻撃もおこなっておくべきだろう。


私のほうも錬金術が終わった。


出来上がったのは、アイシクルソードと呼ばれる氷の剣に、聖属性を付与する神聖石しんせいせき融合ゆうごうさせたもの。


せいアイシクルソード】である。


氷の刀身にきらきらと黄金の光が輝く、美しいエフェクトが発生する。


これで斬りつければ、ヴァンパイアには大きなダメージとなる。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る