第7章291話:ボス

進む。


進む。


進む。


赤いサラマンダーや、紫色の毒サラマンダーなどが現れる。


そのほか、ミスリルゴーレムなどの手強いモンスターも出現した。


これらを蹴散らしながら、ヒュリミスの光瓶が示す方向にしたがって、洞窟を攻略していく。


やがて。


4時間ほど経ったころ。


私たちは、第5層の最深部さいしんぶへと到達した。


(かなり広い洞窟だった……光瓶がなかったら、大変だっただろうね)


と私は思う。


光瓶を使ったおかげで一切迷うことなく、最短ルートを通ることができた。


だからこそ素早く最深部にたどり着くことができたのだが、それでも4時間もかかった。


普通に探索していたら、もっと膨大な時間がかかったに違いない。


(逆にいえば、採掘できるポイントもたくさんあるということだけど)


広いということは、それだけ採掘場所も存在するということ。


貴重な資源がたくさん眠っているということ。


この第5層を解放したあとが楽しみだ。


「ここが……ボス部屋ですか」


とエドゥアルト。


第5層の最奥さいおう――――そこには巨大な扉が立ちはだかっている。


赤と黒銀色で構成された、荘厳そうごんな扉だ。


「いよいよですね。緊張してきました」


とフランカ。


私は告げる。


「バフをかけ直しておきましょう」


バフポーションをアイテムボックスから取り出して、再度、エドゥアルトとフランカに提供する。


加えて、耐性ポーションも使っておくことにした。


耐性ポーションとは、状態異常に対する耐性を高めるポーションだ。


――――ここに来る途中、毒サラマンダーなどのように、状態異常を発する魔物もいくらか存在した。


高レベルダンジョンだけあって、きょうランクの状態異常じょうたいいじょう攻撃であり、まともに食らったら"詰み"もありえた。


道中の雑魚モンスターですらそんな感じだったので、ボスとなると、どれほど厄介な攻撃をしてくるか、わかったものではない。


用心ようじんしておくに越したことはないだろう。


準備は完了した。


「私が開けます」


そう述べたエドゥアルトが、ボス部屋の扉を押し開く。


重厚じゅうこうな物音を立てながら、扉が開いていく。


そして、扉が開き切ると、ボス部屋の中の様子が視界に広がった。


前後左右ぜんごさゆう100メートルぐらいある空間だ。


天井もきわめて高い。


その部屋の中心にいるのが―――女である。


腰ぐらいまで伸びたロングヘアの、滑らかな紅色の髪。


裾が破けた黒いマント。


赤い目。


牙。


コウモリのような形をした巨大な翼。


このボスは……


「ヴァンパイア……?」


私はぽつりとつぶやく。

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