第7章280話:演説その後

大成功に終わった広場での演説。


この演説を聞いていた聴衆ちょうしゅうたちは、領都りょうとから各地へと、演説えんぜつ内容ないようを伝達していった。


特に、今月から領民税が40%になるという事実は、ルチル領に住まう全領民ぜんりょうみんに衝撃を与えた。


クランネル王国に敗北したことに対する嘆きは一気に薄れ……


クランネル王国の統治を受け入れるムードが急激に高まっていくことになった。


異世界には選挙制度がないので、支持率という言葉はない。


しかし、支持率というものがあるとしたら、私の支持率はうなぎのぼりのはずだ。


ゆえに私は、このチャンスを最大限に活かすことにした。





統治における基本は、パンとサーカス。


つまり、




娯楽


である。


この二つが保たれていれば、人々は文句を言わない。


為政者いせいしゃへの支持は高く保たれることになる。





まず―――娯楽。


これに関しては、オーギュストが制限していた娯楽の自由を、全面的に解禁した。


オーギュストは、全170項目にわたる娯楽の禁止令を出していたが、全て撤廃。


領民に自由を謳歌してよい、と





そして――――食。


食とは一般的に雇用とイコールである。


働いてさえいれば食事にありつけるので、雇用が安定していることが重要となる。


現在のジルフィンド国民は、失業率が高いし、貧困が蔓延している。


ゆえに、やるべきこととしては、貧民を救済すること。


雇用を創出すること。


……などが、課題となるだろう。





同時に、経済を回復させて、景気をアップさせることも重要だ。


景気が悪ければ、どこの商会もヒトを雇わないしクビにしていってしまう。


ゆえに景気回復けいきかいふく急務きゅうむである。


だが、経済や景気の回復なんてのは、すぐに達成できるものではない。


時間が必要だろう。


とりあえず一度、ルチル領の各地を視察したい。


そしてルチル領にどんな強みがあって、どんな雇用を生み出せるのかを考えたいところだ。


(ルチル領は広いから、いろいろ特産にできそうなモノはありそうだね)


しかし反面、広いぶんだけ管理も大変だし、商業圏しょうぎょうけんを構築するのも、時間がかかるだろう。


何か良い方策ほうさくはないものか。


(あ、そうだ……!)


と私はそのとき、気づいた。


領主である私と、ルチル商会とが連携して取り組めば、経済の回復が劇的に早く進むのではなかろうか。


ルチル商会が政商のような側面を持ってしまうことになるが……


経済や景気の主導権を、ルチル商会が握りやすくなる。


経済を掌握していれば、政治の意思決定もスピーディにおこなえる。


必要な政策を、素早く実行できるのだ。


(さっそくアリアに手紙を出しておこう)


私は使用人に命じて、アリアへ書簡しょかんを送るのだった。

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