第7章277話:税について

翌朝。


晴れ。


朝食を食べたあと。


昨日に引き続き……


屋敷の執務室しつむしつにこもって、書類仕事しょるいしごとをおこなう。


その途中。


気になる書類に目を留めた。


「ん……税金の書類ですわね」


それは、税金について記された書類。


現在、ルチル領の領民りょうみんにかけられている税の種類について書かれている。


私はおもむろに読み上げていく。


「酒税」


酒にかけられた税。


「結婚税」


結婚をした際に取られる税。


「出産税」


子どもを産んだときにも取られる税。


うーん、これはすごいね。


いろんなところで税をとりすぎでしょ。


領民りょうみんぜい


領民税とは月々つきづきに徴収される税金だ。


異世界では領地ごとに領民税がかけられている。


現在、ルチル領では……


なんと80%の領民税がかけられていた。


「りょ、領民税80%って……」


私は驚愕した。


領民税が100%だと、たとえば農民なら、収穫物を根こそぎ全て没収されるということ。


つまり領民税が80%というのは、8割を没収するということだ。


取りすぎというレベルじゃない。


これでは庶民の生活はぎりぎりだろう。


「これはすぐにでも引き下げないとね」


クランネル王国の場合、領民税の平均は30~40%程度だ。


これでも日本を基準にすると、暴動が起こりかねないレベルの重税じゅうぜいだが……


異世界では普通である。


ルチル領でも、30%前後に引き下げる必要があるだろう。


(税金というのは、取りすぎても良くないんだよね)


と、私は考える。


税金とは、領地を発展させるために徴収すべきであって。


決して領主が私利私欲しりしよくを肥やすために徴収するものではない。


これは道徳的にそうあるべきだ……という感情論ではなく。


むしろ領主が富むために必要なことなのだ。





たとえば、領主が技術開発ぎじゅつかいはつのために税金をとうじる。


そうして開発できた技術を、職人に提供したとする。


職人が、その新しい技術を使って仕事をすれば、たくさん儲けることができ……


領主へ納める税金もアップする。


そして領主は、増えた税金を使って、また新たな技術を開発する。


そしてその技術を職人に提供し……


以後ループだ。





領主は技術開発のために税金を使えば、結果的に、大きな税収となって帰ってくる。


その税収を、また技術開発の為に使えば、また大きな税収となって帰ってくる。


このスパイラルによって、領主は、税金を投じれば投じるほど、豊かになっていくのだ。


まさに理想的な領地経営である。





逆に、目先めさきの利益を追い求めて、領民に重税をしたり……


大量に搾取した税収を、領主が自分のためだけに使ったりすると、領地は発展しないばかりか、どんどん貧しくなる。


最終的には農民や職人が逃げ出したり、働く気力を失って、税収が激減げきげん


領地の破綻はたんまねくことにもなりかねない。





だから、まずは税金を30%まで引き下げる。


可能であれば20%以下を目指して、領地経営をしていきたいところだ。


(でも、まあ、すぐに大幅減税おおはばげんぜいとはいかないから、段階的に減税していく感じになるだろうね)


私は頭の中で、税金の削減プランを考えていくのだった。

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