第7章269話:葬儀

そして3日後。


フランチェスカを王都の屋敷に呼びつける。


執務室しつむしつ


私はフランチェスカに対して、領地の件について説明した。


「――――というわけで、あなたに代官を任せたいと思っておりますわ。引き受けてくださるかしら?」


そう述べると、フランチェスカは少し考え込むような顔をした。


ややあって口を開いた。


「私を抜擢ばってきしてくださったのは、とても嬉しく思いますわ。ただ現在、ルチル商会の企画が途中でして……」


「なるほど……その企画というのは、いつごろ終了するんですの?」


とアリアに尋ねる。


するとアリアが答えた。


「半年ほどはかかるかもしれません」


「わかりましたわ」


と私は言ってから、告げた。


「では半年後はんとしごで構いませんので、企画が終了後、代官を引き受けてくださるかしら」


「それなら、はい。喜んでおけいたしますわ」


とフランチェスカは答えた。


ひとまず代官は、決まった。


ただフランチェスカが代官に就任するまでの半年間は、私が領主経営りょうちけいえいをやるしかなさそうだね。


(まあ半年ぐらいなら、やってみてもいいかな)


領主の仕事も、一度やってみたいと思っていたしね。






さて、ジルフィンド地方へ着任ちゃくにんする準備は整った。


しかし。


その前に。


クランネル王国で参加すべき行事があった。


葬儀そうぎだ。


王都のはずれ。


遠くに森と岩山を眺められる丘。


墓石ぼせきが立ち並ぶ―――墓地ぼち


この日、戦争において死んでいった戦死者せんししゃたちの葬儀をおこなっていた。


「……」


葬儀に参列する者たちは、さまざまだ。


私、


エドゥアルトやフランカ、


シャルティアさん、ホーヴァンさん、


魔法銃撃隊、


ベアール将軍、


その他、戦争に参加した者たち。


さらには王族、軍人貴族など、さまざまな人々によって、長蛇ちょうだ葬列そうれつができている。


ミジェラ女王が数歩すうほ、前に出て、静かに告げる。


皆々みなみな黙祷もくとうせよ」


目を閉じ、各々おのおのが祈りを捧げる。


いくさで果てていった者たちの追悼ついとうをおこなう。


戦没者の魂が安らかな眠りにつくように。


一陣いちじんの風が吹きぬけて。


丘の草木をやわらかく撫でた。






葬儀のあと。


丘の去り、王都の手前まで戻って来たところで。


「少しだけ、お時間をいただけないでしょうか」


とベアール将軍に話しかけられた。


喪服もふくを着ているベアール将軍。


だが、やはり独特の威圧感がある。


私は言った。


「構いませんわ。……なんでしょうか?」


「あなたは将来、軍の道を進まれるのでしょうか?」


とベアール将軍が尋ねてきた。


彼女は、続ける


「ルチル様が将軍や司令官となるのであれば、この国の軍事は磐石ばんじゃくになると考えます。是非、腹心ふくしんをお聞かせ願いたい」


「いいえ、わたくしは軍職ぐんしょくくつもりはありませんわ」


と私は即答した。

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