第7章265話:聖堂

夕方。


私が屋敷にいたとき。


神殿から、一度、面会しないかと連絡をいただいた。


寄進の件について、お礼が言いたいのだそうだ。


その日のうちに了承の返事を出すと、なんと、聖女さまが直々じきじきに会ってくださることになった。


後日。


私は、屋敷の自室で神殿へ向かう支度をしていたが。


そのとき、シエラ様が現れた。


「あら、久しぶりですわね」


と私は言った。


「久しぶり。でも、実はずっと近くにいたのよ?」


「そうなんですの?」


「ええ。あなたが戦争で活躍しているところを、その場で見てたわ」


つまり戦場にいた、ということか。


シエラ様が言った。


「今日は神殿に向かうそうじゃない? だったら、あたしもついていこうかと思って」


「神殿に用があるんですの?」


「いいえ。ただの興味よ。当代の聖女も見ておきたいしね」


なるほど。


精霊として、聖女がどんな人物なのか、気になるということか。


まあ、私はついてくることを拒否するつもりはない。


どうせシエラ様の姿は他人には見えないしね。






さて、神殿に向かうことになる。


神殿の聖堂は王都に存在するので、護衛にエドゥアルトを連れて、徒歩で向かう。


聖堂の前にたどりつく。


立派な聖堂だ。


いったい何年かけて建造されたのか不明なほど、巨大な聖堂。


聖堂の外観は、まず王国最高峰さいこうほう石工せっこうや職人たちが、精緻せいちらして作った彫刻。


入り口に立つ2体の聖像せいぞう


この2つはどちらも女の精霊像せいれいぞうである。


また聖堂の周囲には、一定の規則にのっとった配置で尖塔せんとうが建てられている。


少し遠くからは、聖歌隊せいかたいによる声楽が聞こえてきた。


私は、聖堂の中に入った。


入り口を抜けると、広間になっており、神殿の管理者である大神官だいしんかんが立っていて、出迎えてくれた。


「ようこそお越しくださいました、ルチル様。聖女さまが、奥の部屋でお待ちしておられます」


と神殿の管理者である大神官は、奥へと案内してくれた。


広間の横の扉から、廊下に出る。


廊下を進む。


さらに扉を抜けると、左右に石柱が立ち並ぶ通路に出た。


その通路を突き当たりまでいくと……


聖堂の最深部にたどりついた。


そこは【ひかり】と呼ばれる部屋であった。


「中に聖女さまがおられます。くれぐれも、ご無礼のなきように」


と大神官が忠告してから、部屋の扉をあけた。


中に入る。


部屋の奥に段差があり、段差のうえに一人の女性が立っている。


あれが……聖女さまだ。

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