第7章258話:パーティー

私はツッコミを入れる。


「いや、助けてくださいませ」


しかしエドゥアルトは肩をすくめた。


「自分には、無理です。申し訳ありません」


まあ、そうか。


ここにいる多くの者は、エドゥアルトよりも身分が高い。


エドゥアルトに人払いをするのは不可能だ。


私はどうしたらいいか、戸惑うばかりであった。


そのとき。


「ルチルが困っているだろう。いっぺんに話しかけるな」


と注意したのは、ミジェラ女王であった。


その場が一斉に沈黙する。


談合だんごうの機会を持ちたいなら、ルチルから声がかかるのを待つがよい。さ、退散たいさんせよ」


女王による直々じきじき注意喚起ちゅういかんきに、となえる者などいない。


皆、黙って退散していった。


人だかりが消えてから、ミジェラ女王は私に言ってきた。


「人気者だな。みな、英雄となったルチルと、つながりを持ちたくて仕方ないと見ゆる」


「英雄だなんて……わたくしには荷が重いことですわ」


と私は肩をすくめた。


ミジェラ女王は告げる。


「英雄という肩書きに実感がかなくとも、お前が成し遂げた功績を考えれば、周りはそう認識する。私とて、それは同じことだからな」


と、そこでミジェラ女王は、私に一礼をしてきた。


此度こたびは、クランネル王国を救ってくれて、本当に感謝する。お前の働きには、最大限にむくいると約束する」


「わたくし一人の力ではありませんわ。此度の戦勝は、全員で勝ち取った勝利です」


と謙遜しておいた。


ミジェラ女王が頭を上げてから、告げた。


「それにしても……将軍を何人もり、あのナナバールやカラバーンまで討伐するとはな。クランネル王国始まって以来の偉業いぎょうだぞ」


「ほ、めすぎですわ」


「いいや。これほどの戦果を挙げたクランネル戦士は、かつて存在したことはない。ルチル・ミアストーンの名は、間違いなく歴史に刻まれることになるだろう」


……たしかに、英雄ナナバールを討伐したことは、かなりのニュースになるだろう。


歴史に名が刻まれるというのも、きっと比喩ではない。


私は身がすくむ思いがした。


「ところで、アレックスの件だが、」


とミジェラ女王が話題を変えた。


「祝いのせきでする話ではないゆえ、手短てみじかに話すが……ヤツが任務中にんむちゅうにしたことについては、聞き及んでいる」


アレックスが任務中にしたこと……


ネキアを崖から突き落とした件だろう。


「アレックスは愚かであると思いつつ、息子ゆえ、甘く接してきた部分はあった。しかし今回ばかりは限度を越えている。ゆえに厳しい処罰をもって、しでかしたことの責任を取らせるつもりだ」


「さ、さようですか」


厳しい処罰……


なんだろう?


でも、女王が「厳しい」とはっきり口にするほどだ。


なさ容赦ようしゃない罰が待っていると思われる。


アレックス……南無なむ






――――――――――――――――――――

おしらせ:

作者は、本作の他にも異世界ファンタジー作品を執筆しています!

よろしければ、こちらもお読みください!

   ↓

【島と海ばかりの異世界に、貴族令息として転生。ハズレスキルだったので追放されたけど、島で魚料理の店を開いたら大人気になったので、ヒロインとハーレムしながら異世界を満喫します】

https://kakuyomu.jp/works/16818093073452500672




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る