第7章257話:パーティーの開始

控え室の外で、エドゥアルトとフランカに会った。


エドゥアルトはタキシード。


フランカは落ち着いた緑のドレス。


二人とも少し顔がこわばっている。


「緊張しておりますの?」


と私は尋ねる。


フランカが答える。


「は、はい。こういう大きなパーティーに参加するのは、初めてで……」


エドゥアルトも同調する。


「パーティーは何度も参加したことがありますが、王族の方も参列するパーティーとなると、経験がありませんからね」


子爵令嬢であるフランカと、騎士であるエドゥアルト。


上級貴族がごろごろ参加するパーティーの経験はないだろう。


「ですが、ルチル様は堂にいっておられますね。ドレスも、とてもお綺麗です」


とエドゥアルトが言ってきた。


フランカも同意する。


「そうですね! やっぱり、本物のお姫様は違いますね!」


「二人の正装も、とても似合っておりますわよ」


と私も、二人の衣装を褒めた。


さらに私は告げる。


「さて……話はあとにして、まずはパーティー会場へ向かいましょう」


「はっ」


「はい!」


と二人は返事をした。






広いパーティーホール。


テーブルクロスのかけられた円形テーブルが多数、置かれている。


料理はビュッフェ形式。


立食りっしょくパーティーである。


私たちがパーティーホールに入って30分後。


全員に白ワインが注がれたシャンパングラスが渡される。


ミジェラ女王があいさつをする。


諸君しょくん。パーティーへの参加とご足労そくろう、まことに感謝する」


と前置きをしてから、告げる。


此度こたびのパーティーは、国のために戦った将兵しょうへいたちの労をねぎらい、戦勝を言祝ことほぐものである。立食パーティーゆえ、自由に動いてもらって構わない。皆々みなみな、存分に楽しんでいってくれ」


長々ながながしい挨拶はないようで、ミジェラ女王はすぐに締めくくる。


「では、乾杯!」


ミジェラ女王が告げると、全員がグラスを上に掲げたり、近くの人とグラスを打ち合わせてから、ひとくち飲んだ。


パーティーが開幕する。


(んー、とりあえずご飯を食べようかな)


と私は思って。


動き出そうとした、そのとき。


パーティーに参加していた者たちが、ぞろぞろと私のもとへやってきた。


私はきょとんとする。


あっという間に私は取り囲まれてしまった。


口々に言う。


「ルチル様、このたびはご戦勝、おめでとうございます!」


「ルチル様のご活躍を聞きました!」


「ナナバールを討伐なされた話について、是非お聞かせください!」


と賞賛の言葉を述べる者もいれば。


「イルビヒ商会と申します! よろしければ、当商会とうしょうかいの扱う商品について、ご説明のお時間をいただけないでしょうか!」


「自分はクレイン伯爵家です。是非、うちと親交を――――」


と営業セールスのごとく話しかけてくる者もいた。


「ルチル様……人気ですね」


とエドゥアルトは言った。


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