第6章252話:公都

フロヴィッツ砦の防衛。


アーガルシュ砦の防衛。


その二つが成功したことにより、クランネル軍の勝利は確実なものとなった。


ヒズナル、


ナナバール、


ガレッツ、


このジルフィンドの三将軍さんしょうぐんが全て死んだことで、ジルフィンド側には、もう戦争を続ける力が残っていない。


ゆえに、ここから一気に反撃に出ることを、クランネル軍は決定した。


まず最初の1週間で、国境付近こっきょうふきん諸都市しょとしを奪還した。


さらに次の1週間で、ジルフィンド公国へと侵攻。


半月かけて、破竹はちくいきおいで砦を落としていき……


最終的に、ジルフィンドの王都である【ジルフィンド公都こうと】を包囲することに成功した。


「ジルフィンドの者へとぐ!」


とルーガが【拡声の魔石】を持って、公都の城壁に向かって叫ぶ。


「公都を開門かいもんせよ! そして、ジルフィンド大公・オーギュストの首を差し出せ! それをもって、ジルフィンド公国の降伏を認めるものとする!!」


許してほしければオーギュストの首を持ってこい――――


それがルーガの要求だった。


さらにルーガは、この降伏勧告がスムーズに進むように、あるものを用意させた。


それはジルフィンド将軍たちの首である。


「これを見よ!! ジルフィンド軍が誇る、将軍や英雄たちの首だ!」


ナナバールやヒズナル、ガレッツたちの首を、槍に突き刺した状態で、高々たかだかと掲げる。


「ナナバール、ヒズナル、ガレッツ、カラバーン……ジルフィンドを指揮する大将軍だいしょうぐんたちは、戦死した! これを見てもまだ、クランネル王国との戦争を続けるか? もし降伏を受け入れないなら、公都を焼き打ちにしてくれるぞ!」


ルーガの宣告に、辺りは静まり返っている。


しかしジルフィンド公都の中にいる者たちが、震え上がったような空気を感じた。


「1時間待つ! それまでに、返事を考えておけ!」


と告げてから、ルーガは演説を終了した。





1時間後。


ジルフィンドの公国こうこく騎士団長きしだんちょうがやってきた。


ジルフィンド大公であるオーギュストを、縛り上げられた状態で、連れてきている。


「は、放せ! 無礼者!!」


とオーギュストが必死で抵抗している。


騎士団長は、言った。


「要求通り、ジルフィンド大公――――オーギュスト・ド・グララ・フォン・バズラール・ジルフィンドを、連行して参りました」


「うむ」


とルーガは満足げに応じた。


オーギュストを、ルーガの部下が引きとる。


騎士団長が告げる。


「降伏をします。ジルフィンド公国を、お許しください」


と騎士団長が、ひざまずいて降伏の意を示した。


オーギュストが激怒する。


「ば、馬鹿者どもが! 最後まで戦え! それでもジルフィンドの騎士か、貴様は!?」


「……」


騎士団長はオーギュストを無視した。


まあ、このおよんで、ジルフィンドに勝ち目があるわけがないからね。


オーギュスト一人を切り捨てて、それ以外の全てを生かすことを選んだのだ。


賢明である。


ルーガが命じた。


「オーギュストを連れていけ」


「はっ!」


と部下の兵士が応じる。


「やめろ! 離せ!」


とオーギュストが抵抗したが、兵士たちは殴りつけて黙らせ、連行していった。


さらにルーガは配下の軍に命令を飛ばす。


「これよりジルフィンド公都を占領する!! ただ、民衆に対して手荒てあらなおこないはするなよ? 今後ジルフィンドの民は、クランネルの民となるのだからな」


命令を聞いた各隊長かくたいちょう指揮しきりはじめる。






数分後すうふんご


クランネル軍が公都こうと城壁内じょうへきないへと侵攻する。


市民に抵抗はなく、都市に詰めていた兵士や騎士たちも、すみやかに降伏した。


このためスムーズにジルフィンド公都を制圧することに成功した。


かくして、ジルフィンドとクランネルの戦争は……


王国の勝利という形でまくを閉じるのだった。






第6章 完




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