第6章250話:ガレッツの視点

そして。


同時に、アーガルシュ砦のほうからも喊声かんせいが爆発した。


ルーガ軍が籠城戦ろうじょうせんをやめて、全軍突撃ぜんぐんとつげきを開始したのである。


「一気にカタをつけにきよったか!!」


とガレッツ将軍は歯噛はがみする。


ルチル軍による援軍。


ここが勝機しょうきと見たルーガ軍が、砦を守るのをやめて、攻勢こうせいに出たのである。


「くそッ!!!」


ガレッツ将軍の頭の中に、無数に作戦が浮かび、消えていく。


撤退はできない。


はさちをされているからだ。


しかし、魔法銃とこうから戦っても勝てる予感がしない。


なにしろ相手はナナバールすら打ち破った軍勢なのだから。


自分に勝てるのか……?


敗北の予感がつのっていく。


と、そのとき。


「いましたわよ!」


と声がした。


ガレッツ将軍が振り返る。


そこに、攻め込んでくるルチルの姿があった。


ガレッツ将軍がにやりと笑った。


(バカめ……大将みずから攻め込んでくるとは!!)


この世界において、大将が最前線さいぜんせんを駆けるのはよくあることだが、ガレッツ将軍はそれを愚かだと認識していた。


ルチルが愚かな将軍で助かった!


……とガレッツ将軍は思った。


(ルチルを殺せば、クランネル側にかたむきかけた流れを引き戻せる!! 殺してやる!)


とガレッツ将軍は思い、剣を引き抜く。


「ヤツを囲むぞ! 数で押しつぶせ!」


ガレッツ将軍は周囲にそう命じた。


周囲の兵士たちは精鋭。


そんな精鋭たちが、ガレッツの命令にしたがい、ルチルに包囲をかけていく。


しかし。


「ハァッ!!!」


ルチルが、取り囲んできた兵士を簡単に蹴散らす。


「馬鹿な……」


ガレッツ将軍は驚嘆する。


ルチルの戦闘力は、規格外だ。


カラバーン将軍すら上回うわまわるかもしれない。


そして、ルチルが楽々らくらくと兵士の包囲を突破してきた。


……まずい!


「う、うあああああああ!!」


ガレッツ将軍が悲鳴を上げて、逃げ出した。


その背中にルチルが迫る。


「ガレッツ将軍。おくび頂戴ちょうだいいたしますわ」


「待っ―――――」


あわてて降伏をねがようとした。


しかし。


それを口にする前に、ルチルの剣がガレッツの首をハネ飛ばしていた。



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