第6章248話:アーガルシュ砦

まえがき:

さすがに戦争パートも長くなってまいりましたので、

ここからは駆け足で終わらせようと思います。

ジルフィンドとの戦争パートは、あと5話~10話ほどで終わる予定ですので、もう少しだけお付き合いいただけると幸いです。

―――――――――――――――――




ヒズナル軍を打ち破った私たち。


夕方、派手なうたげがおこなわれた。


飲めや、歌えやのどんちゃん騒ぎ。


砦の牢屋に放り込まれたアレックス以外は、歓喜に包まれていた。


夜。


天幕てんまくにて。


「我々は見事、ヒズナル軍を破り、フロヴィッツ砦の防衛に成功いたしましたわ。まずは皆様、お疲れ様です」


と私は挨拶をした。


己を、互いを、祝福する拍手が巻き起こる。


拍手が終わったあたりで、私は宣言した。


「このまま一気にカタをつけ、戦争を終わらせようと思いますわ」


「カタをつけるとは、具体的には?」


とベアール将軍が聞いてきた。


私は答える。


「もちろん、アーガルシュとりでの救出に向かいますわ」


私は掲示板に貼られた地図を示唆しながら、説明した。


「フロヴィッツ峡谷を抜けて、道を北上ほくじょうすれば、アーガルシュ砦を襲撃するジルフィンド軍の、背後を取ることができます。あとはルーガ軍と協力して、ジルフィンド軍をはさちにして潰します。これが、今回の戦争の最終作戦さいしゅうさくせんです」


「思ったより、ラクに終わりそうですな」


とベアール将軍は言った。


私はうなずく。


ルーガ軍と、ルチル軍によるはさちだ。


しかもこちらには魔法銃がある。


ジルフィンド軍は対応できまい。


私は告げた。


「我々がヒズナル軍を打ち破ったことが、敵に知れ渡る前に、挟み撃ちの構図を作ってしまいましょう。明日の朝、さっそく出発いたしますわ」


会議は終了する。


翌朝。


私たちは、アーガルシュ砦に向けて進軍を開始するのだった。







<ルーガ視点>


3日後。


昼。


アーガルシュ砦にて。


ルーガは、砦の外壁がいへきの上に立ち……


激しい戦いを繰り広げる戦場を眺めていた。


戦争が開始してからずっと、ルーガが取っている作戦は、徹底した籠城戦ろうじょうせんだ。


ルーガの采配さいはいにより、なんとか砦は持ちこたえていたが……


ジルフィンド軍による、連日れんじつの攻撃によって、いよいよ限界に達し始めている。


(アーガルシュ砦が陥落するのも時間の問題か……)


とルーガは予感した。


今回、アーガルシュ砦の戦いにおいて、ジルフィンド軍を指揮するのはガレッツ将軍。


ガレッツ将軍は天才というほどではないが、名将めいしょうと呼ぶにふさわしい戦上手いくさじょうずであった。


ガレッツ軍の戦略的な立ち回りは、敵ながら見事なものであり……


ルーガがお手本てほんにしたくなるような攻城戦こうじょうせんであった。


(もう少し、敵がおろかだったならば……ここまで苦戦はしなかったかもしれないが)


もともとルーガ軍は1万しかいない。


一方ガレッツ軍は数倍の兵力を有しており、数において差がある。


ただでさえ兵力差へいりょくさがあるのに、それを名将がひきいているとなると、太刀打たちうちできない。


敗北は必定ひつじょうだったとルーガは感じる。


(死ぬ覚悟を決めるか)


とルーガが思った。


そのときだった。


「ル、ルーガ閣下かっか!!」


伝令兵がやってきた。


ルーガは尋ねる。


「なんだ?」


「ルチル様の軍勢ぐんぜいが、援軍えんぐんに駆けつけております! その数、5000!」


「なに?」


ルチルが援軍にやってきた……


それはつまり、フロヴィッツとりでの防衛に成功したということだ。


(あの天才ナナバールを打ち破ったのか!)


とルーガが驚愕する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る