第6章247話:勝利

気絶したヒズナル。


ベアール将軍が、ヒズナルの首を切り落とした。


「これで……終わりだ」


とベアール将軍が静かに告げた。


あっけない幕切まくぎれだった。


でも、ようやくこれで終わりか。


私はホッと息をつく。


そのときだった。


「貴様……!」


アレックスがベアール将軍をにらんで、叫んだ。


「私が人質に取られていたのだぞ!? それなのに無遠慮ぶえんりょに攻撃を仕掛けるとは! もし私がヒズナルに殺されていたら、どう責任を取るつもり―――――」


「黙れ」


とベアール将軍が、アレックスにぴしゃりと告げた。


ベアール将軍の迫力に、アレックスがひるむ。


「話は聞いたぞ。貴様、ネキアを崖から突き落としたそうだな?」


そうベアール将軍がにらむと、アレックスは冷や汗を浮かべて反論した。


「……! あ、あれは王族を監視する、不届者ふとどきものゆえ、私が罰を与えたのだ!」


「ふざけた戯言ざれごとを抜かすな!!」


ベアール将軍が激怒する。


空気がひりつくような、恐ろしい迫力だ。


さすがにアレックスも震える。


ベアール将軍が冷たく言った。


「ネキアの件に関しては、軍法会議ぐんぽうかいぎにかけさせてもらう」


「なっ……王族である私を、処罰するつもりか!?」


「処罰するかどうかも含めて、軍法会議で審査してもらおう。しかし……ネキアを突き落としたこと、タダで済まされると思うなよ? 私はお前を許さない」


とベアール将軍が告げて、きびすを返した。


アレックスは納得いかないような顔をしていたが……


激情するベアール将軍に突っかかる勇気はないのか、沈黙していた。


ベアール将軍は私に言ってきた。


「ルチル様。これにて、ヒズナル軍との戦争は終わりです。このいくさは……我々の勝利です」


「ええ。ヒズナルを討ったことを、すぐに全軍ぜんぐん通達つうたつしましょう」


私はそう返事をした。







かくして。


ナナバール将軍・ヒズナル将軍の両名の戦死により……


フロヴィッツ峡谷の戦いは、クランネル軍の勝利にて決着する。


ヒズナル軍との戦争が、ようやく幕を閉じたわけだ。


私たちは、父ルーガに任されたフロヴィッツとりで防衛ぼうえいの任務を、無事に完遂かんすい


これをきっかけに、クランネルとジルフィンドの戦争は、一気に終戦しゅうせんへと加速していくことになった。




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