第6章246話:ヒズナル

そして。


絶好調となったクランネル軍は、その圧倒的な士気のまま。


ジルフィンド軍を押しつぶす。


2時間後。


いくさ趨勢すうせいは、完全にけっした。


フロヴィッツ峡谷における、あらゆる戦線せんせんにおいて、クランネル軍が勝利した。


ジルフィンド軍を蹴散けちらした私とベアール軍は、ヒズナル将軍のいる本陣へと攻め込んだ。


しかしヒズナル将軍は、敗北をさとったか、とっくに逃亡していた。


私たちはすぐさまヒズナル将軍を追いかけた。


通常ならば追いつけなかったかもしれないが……


私はゲーム知識によって、近道となるみちを知っていたので、ヒズナル将軍に追いつくことができた。


ベアール将軍とともに、ヒズナル将軍を取り囲む。


「ち、近づくな!!」


壁際かべぎわに追い込まれたヒズナル将軍が叫んだ。


「それ以上近づけば、こいつを殺すぞ!!」


とヒズナル将軍がやいばを向けた先にいるのは、アレックスだ。


実は、いましがた知ったことだが……


どうやらアレックスは捕虜になっていたらしい。


そして現在は人質としてヒズナル将軍に使われているわけだ。


捕まった際に、相当そうとうひどく暴行を受けたのか、アレックスは血だらけである。


顔もれあがっている。


(ど、どうやって助けよう……)


と私は困惑した。


アレックスが捕虜になるなんて、想像さえしていなかったからだ。


しかし。


悩む私に対して、ベアール将軍の決断は早かった。


ベアール将軍は、ヒズナル将軍の脅しなどにもかいさず、ずかずかと近づいて間合いを詰めた。


「き、貴様! こちらの言葉を聞いていなかったのか!! それ以上近づけば、王子を殺――――」


ヒズナル将軍がそこまで言いかけたとき。


ふいにベアール将軍が加速する。


あまりの速さで間合いを詰めるベアール将軍に、ヒズナル将軍は対応できない。


ベアール将軍が前蹴まえげりを放った。


「ごふぁっ!!?」


ヒズナル将軍のあごに直撃する。


ヒズナル将軍がひっくり返り、一瞬で気絶した。

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