第6章244話:決着

ナナバールが恐怖の表情を浮かべる。


「終わりだ」


とシャルティアさんが剣を向ける。


ナナバールが懇願する。


「やめろ。やめてくれ!」


「……」


「やめて、ください……殺さないで、ください……降伏こうふく、します……!」


ナナバールが両膝りょうひざをつき、頭を下げる。


「この通りです……許して、ください……! お願い、します……!!」」


痛みに耐えながら、ナナバールが涙ながらに訴えてきた。


私は無慈悲むじひに告げた。


降伏こうふくは認めないと、最初に宣言したはずですわ」


すると、ナナバールがバッと頭を上げて、激怒した。


「俺が降伏をすると頭を下げてるんだ!! 言うことを聞けよ、クソ令嬢がああぁぁッ!!」


ナナバールの怒りがこだまする。


空気が冷え切る。


シャルティアさんがまず、剣を振り下ろした。


ナナバールはあわてて避けたが、かわしきれず、深手ふかでう。


「がああああっ!!?」


ナナバールが悲鳴をあげる。


斬られ、痛みによろめきながら、なんとか逃げようとするナナバール。


その背中に、ホーヴァンさんが剣の刺突しとつを放つ。


ナナバールの背中に、ホーヴァンさんの剣先けんさきさる。


「ああ、あがああああっ!!!」


絶叫するナナバール。


そこに滑空かっくうするように踏み込んだエドゥアルトが、ナナバールの左足を深く切りつけ、行動の自由を奪った。


「ぎゃああああああああああっ!!!」


ナナバールがたまらず、膝をついた。


最後に。


フランカが、ナナバールのそばに立った。


静かにバトルアックスを振り上げる。


「だのむ……ゆるじて、くれ……ッ」


ぼろぼろと泣きながら懇願するナナバール。


そんなナナバールの首に向けて。


フランカがバトルアックスを振り下ろした。


ナナバールの首が、あっけなく切断され、ハネ飛ばされる。


決着である。


「……」


私はナナバールの死体を、静かに眺める。


ジルフィンド将軍はほとんど全員、死んだ。


ガゼルも死んだ。


ナナバールも死んだ。


残っているのはヒズナル将軍だけだが、彼ひとりに戦況せんきょうをどうにかする力はない。


実質的な総指揮官そうしきかんであるナナバールが死んだ時点で、ヒズナル軍とクランネル軍の戦争は、クランネル側の勝利である。

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