第6章241話:ナナバール隊の悲劇

<ルチル視点>


ブレコウォールの手前の通路。


私たちは、ナナバールたい対峙たいじする。


ナナバールは驚愕きょうがく呆然ぼうぜんとしていた。


ナナバールの部下の兵士たちは、一様いちように焦りと絶望の表情を浮かべている。


「わたくしたちの勝ちですわね、ナナバール将軍」


と私は述べる。


ナナバールは返事もせず、ただただ、ほうけている。


私はさらに告げた。


「一応言っておきますが、降伏こうふくは認めません。あなたが生きていると、ジルフィンドを何度叩き潰しても、復活してくるかもしれませんから」


ナナバールは戦の天才。


いまはゲーム知識と前世の銃火器じゅうかき翻弄ほんろうできているが、今後も同じようにできるとは限らない。


いつかは、彼の頭脳にやぶれるときが来るかもしれない。


だから、その未来の可能性をるために……


この瞬間、ナナバールを討伐する。


降伏は受け入れない。


「それでは……さようなら。ジルフィンドの英雄さま」


私は言いながら、背後に手で合図をした。


その合図を見たシャルティアさんが、号令をかける。


斉射せいしゃせよォーーーーッ!!」


次の瞬間。


銃撃じゅうげき轟音ごうおん炸裂さくれつした。


ズダダッ!!


ズダダダダダッ! ズダダッ!!!


魔法銃まほうじゅう一斉射撃いっせいしゃげき


さらに魔法爆弾まほうばくだん投擲とうてきされる。


ナナバール隊が一瞬にして、阿鼻叫喚あびきょうかんうずに叩き込まれる。


「ぐあっ!!?」


「あ、あああああああ!?」


「肩、肩が、えぐれて……ッ!!」


「あがああああああっ!! 痛えええええええ!! 誰か、誰かポーションをくれええ!!」


たれて倒れた者。


慌ててせた者。


絶叫して逃げまどう者。


魔法爆弾の爆発によって吹き飛ばされた者。


「これが……ルチルの、魔法銃撃隊……ッ」


とナナバールの副官らしき男が、つぶやいた。


彼は絶望と驚愕の表情で、立ち尽くしている。


一方……ナナバールは。


「……」


茫然自失ぼうぜんじしつとしていた。


しかし。


直後、ナナバールは狂気の表情を浮かべた。


「……ああああああッ!! ルチルゥゥゥゥウウッ!!!!」


目を血走ちばしらせ、発狂はっきょうし、剣をさやから引き抜いた。


激怒げきど憎悪ぞうおと敵意を濃縮のうしゅくしたような殺意をみなぎらせながら、ナナバールが突貫とっかんしてきた。


「アアアアアァァァッ!!!」


知略ちりゃくだけでなく、武勇びゆうにも優れるナナバールの踏み込みは、威圧感いあつかんすらともなう迫力があった。


鬼気迫ききせま様相ようそうで、こちらへと滑空かっくうしてくる。





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