第6章236話:移動

その後。


私は、まずシャルティアさんとホーヴァンさんのもとへ向かった。


どちらの隊も、やはりジルフィンド将軍からの攻撃を受けていた。


特にホーヴァンさんの隊は壊滅しかかっていた。


しかし、シャルティアさんとホーヴァンさんの救出は無事に叶い、魔法銃撃隊は合流することができた。






ホーヴァンさんは謝罪する。


「すみません……自分が不甲斐ふがいないばかりに、大勢の仲間を死なせてしまいました」


ホーヴァンさんは沈痛ちんつう面持おももちを浮かべた。


私は答える。


「いいえ。将軍の襲撃を受けていたのですから、仕方ありませんわ」


ホーヴァンさんが大きな被害を受けたのも仕方ない。


私だって今日、たまたま調子が良かったからキルヴィル・ゴルベール・オリビア・ガゼルの四人を蹴散らすことができただけで。


もし不調だったら……苦戦を強いられていたに違いない。


そう思うと、


『魔法銃撃隊にジルフィンド将軍を差し向ける』


……というナナバールの作戦は、極めて脅威だったと、改めて感じる。


私たちは、なんとか将軍たちを返り討ちにできたが、状況によっては、魔法銃撃隊が全滅している可能性もあっただろう。


(……でも、私の勝ちだ)


ジルフィンドの軍団を指揮する将軍は、全て死んだ。


残っているのは総指揮官であるナナバール将軍とヒズナル将軍だけ。


もはやこの戦争は、勝利したも同然だ。


「ルチル様、これからどうされますか?」


とシャルティアさんが尋ねてきた。


「行かなければならない場所がありますの」


「……? それは、どこでしょう?」


「ブレコウォールのすぐ手前ですわ」


ブレコウォール。


高さ300メートルの崖。


ナナバールが、源義経みなもとのよしつねのごとく、その崖を駆け下りて攻めてくる。


おそらく、ナナバールがその作戦を決行するのは、そろそろだろう。


だから私たちは、ブレコウォールの手前てまえせをしておくべきだ。


「負傷した兵士は本陣へ戻ってください。動ける兵士だけで、いきますわよ」


「はっ!」


私たちは、ナナバールが奇襲を仕掛けるであろう地点へと、移動を開始した。

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