第6章235話:vsガゼル2

切断されたガゼルの右腕みぎうでちゅうを舞って、ボタリと地面に落下した。


ガゼルの腕から、大量の血液がこぼれ落ちた。


さすがにガゼルも脂汗あぶらあせを浮かべ始めたが……


彼は笑っている。


片腕を失ったというのに、笑顔を絶やしていなかった。


「くくく、ははははははは!!」


ガゼルが笑う。


「まさか【虚空打こくううち】までかわされ、挙句あげく、カウンターを決められるとはな!!」


何が嬉しいのか、ガゼルが嬉々ききとして告げる。


「ナナバールちゃんと同格の知性ちせいを持ち、武勇ぶゆうはオレ以上!! テメエはいったいなんだ!? 神か、魔王か?」


「……」


「確信したぜ! ルチル・ミアストーン……テメエは、この時代の覇者はしゃとなる! この大陸の全てが、テメエ一人の才能にひれす! ジルフィンドも、テメエ一人に負けるんだ、ギャハハハハハハ!!」


「……何がおかしいんですの?」


「くく、そりゃ笑うだろうが。雑魚ばかりの戦場と思って来てみりゃあ、こんな怪物と出会っちまうんだからよォ」


ガゼルの嬉々ききとした言葉を聞きつつ、私は剣を構える。


ガゼルは、抵抗をやめたように、両腕をだらんとさせる。


「ここがオレの最期さいごか。―――――れよ。お前みたいなヤツに負けて死ぬなら、本望ほんもうだぜ」


私は、目を細める。


剣をにぎる。


そして、ガゼルへ向かって駆けた。


剣を、ガゼルの喉元のどもとへと走らせる。


「あばよナナバールちゃん。先にあの世で待ってるぜ」


悟ったようにガゼルがつぶやく。


そんなガゼルの首を、私はハネ飛ばした。


血飛沫ちしぶきが舞う。


首がごとり、と地面に落ちる。


「ふう……」


私はひと息つく。


剣をバッと振って、血を払った。


「お見事でした!」


とフランカが賞賛してきた。


「ええ」


私はあいづちを打ちつつ、残ったジルフィンド兵たちに視線を向ける。


「あ、あぁ……ッ」


とジルフィンド兵たちは、恐れおののく。


将軍は全て死んだ。


対してこちらの被害はほとんど無い。


もはや、この場にいるジルフィンド兵に勝ち目はない。


ジルフィンド兵たちは戦意せんい喪失そうしつし、逃亡を始めた。


「追いかけますか?」


とエドゥアルトが聞いてきた。


私は首を横に振って、答える。


「いいえ。必要ありませんわ。そんなことより、シャルティアさんたちのもとへ向かわなければ」


ジルフィンド将軍たちが魔法銃撃隊を襲撃する指示を受けているのだとしたら……


シャルティアさんやホーヴァンさんの部隊も危ない。


助けにいくべきだろう。


「将軍の首を回収したら、すぐにシャルティアさんとホーヴァンさんの隊を探しますわよ」


「はっ!」


「了解です!」


とエドゥアルト、フランカは返事をした。

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