第6章234話:vsガゼル

しかし、ガゼルはすぐさまニッと笑った。


「ははははは! 面白おもしれえ!! そうだテメエみたいなのを待ってたんだよ!!」


ガゼルが大笑たいしょうし、異様なポーズを取った。


「俺の全力を受けてみろやッ!!」


次の瞬間。


ガゼルが、ハイスピードで滑空かっくうしてくる。


そして。


空中でぐるりと回転しながら蹴りを放ってきた。


ゲームで【旋風蹴せんぷうげり】と呼ばれていたスキルである。


だが。


私はソレを見切って、回避する。


「……!? 避けやがっただと!?」


トリッキーでアクロバティックな蹴り―――【旋風蹴せんぷうげり】。


ゲーム知識と、精神統一せいしんとういつされた現在の集中状態しゅうちゅうじょうたいでなければ、まず回避できなかったに違いない。


つくづく、いまの私はわたっていると思う。


「ははは、やるじゃねえか! じゃあコレはどうだ!?」


ななうえに飛ぶガゼル。


あらぬ方向への跳躍ちょうやく


そこから、ガゼルはまるで空中を蹴るように、方向転換ほうこうてんかんをした。


ちゅうを蹴って方向転換をする【ダブルジャンプ】である。


「オラァッ!!」


ガゼルが拳を放ってくる。


が……


やはり私は、ソレも見切る。


同時に反撃の斬撃を放つ。


「ハァッ!!」


「!?」


ガゼルは慌てて腕でガードする。


その腕に斬撃が走り、血が飛び散った。


ガゼルが驚嘆する。


「【ダブルジャンプ】に、合わせやがった……だと?」


ダブルジャンプを使って攻撃を仕掛けてくるガゼルに、斬撃を当てるのは簡単ではない。


しかし、ゲーム知識と集中力があれば、できる。


――――勝てる!


「なるほどな……だったら取っておきを見せてやるよ」


ガゼルの雰囲気が変わる。


私は、その様子を見て、すぐに察した。


(【虚空打こくううち】が来る……!)


ゲーム史上、最も凶悪な攻撃の一つだ。


超速度ちょうそくどで突っ込んできて、当たれば即死。


私もゲームをやってたとき、何度も死んだっけ……


だけど、そのぶん練習した。


大丈夫。


虚空打こくううち】には特徴がある。


それは「起こり」があるのだ。


スキルを発動するときの、わずかな予備動作よびどうさ


それさえ見極めることができれば【虚空打ち】を攻略できる。


私は集中力を極限まで高めて、ガゼルを凝視ぎょうしする。


そして。


ガゼルの身体が、かき消える。


(ここ……ッ!!)


私は、横に回避しながら。


カウンターの剣を振るう。


「―――――――――」


目で追うことが不可能な、超加速ちょうかそくで突っ込んできたガゼル。


鷹の鉤爪かぎづめのような手で、掌底しょうていを放ってくる。


しかし。


「くく……まじかよ」


私の剣が、ガゼルをとらえ――――


ガゼルの右腕みぎうでを斬り飛ばしていた。

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