第6章232話:勝利

「あと1人」


私は残る将軍―――オリビアへと視線を向ける。


オリビアはあせを浮かべながら、波打なみうつ剣【フランベルジェ】を取り出す。


「ハァッ!!」


フランベルジェをふるって、魔法を放ってきた。


炎をまとったかまいたちである。


私はソレを回避して、オリビアへと迫る。


攻撃の直前。


投げナイフを放つ。


「くっ!?」


オリビアに迫る投げナイフ。


それをオリビアがフランベルジュではたき落とす。


その間に私はオリビアの間合いへと侵入した。


だがオリビアはさすが将軍。


防御が速い。


私の斬撃に、防御を間に合わせてきた。


しかし――――


私は防御をかいくぐるように斬撃を走らせた。


剣の軌道きどうをジグザグに動かして、オリビアの防御を避け、彼女の身体を斬りつける。


「なっ……防御を、かいくぐっ……!?」


ひざをつくオリビア。


その首を、私はハネる。


これで、オリビアも死んだ。


「ふう……」


将軍2人、討伐完了だ。


それを見ていたジルフィンドの兵士たちが、口々くちぐちにつぶやく。


「そんな……っ」


「オリビア将軍と、ゴルベール将軍が、あんな一瞬で……!?」


「バケモノだ……」


ジルフィンドの兵たちは、私をおびえた様子で見つめてきた。


一方。


味方である魔法銃撃隊からは歓声があがるかと思ったが……


彼らもまた、同様に驚いているようで、歓声より驚愕の声が漏れていた。


「す、すげえ……」


「ルチル様って、強すぎ」


「前の戦いでも凄かったけど、今日は一段とヤバイな」


「ルチル様……神」


……等々とうとう


フランカもはしゃいでいる。


「ルチル様! すごいです、すごすぎます! もう私、ずっとついていきます!」


エドゥアルトもつぶやく。


「わがあるじには、何度も驚かされますね」


私は、そんな賞賛の声を聞きつつ、ひと息つく。


自分の手のひらを見つめた。


(今日は、負ける気がしない)


はじめての感覚だ。


磨いてきた剣術、性能を上げ続けてきたバフポーション。


積み上げてきたものが、一つになっていく感覚。


自分が今までよりも、ひとつ高い次元へと至ったような……不思議な全能感ぜんのうかんがある。


もっと戦いたい。


そして、この感覚を完全なものにしたい。


私はそう思った。

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