第6章227話:アレックス視点6

ガゼルが剣を離す。


直後、アレックスが斬撃をす。


回避したガゼルがアレックスのどうに拳を叩き込む。


それはガゼルにとって、全力の1割以下の攻撃であったが……


「ぐふっ……!!?」


激しくたたらを踏むアレックス。


ガゼルはつぶやく。


「弱え」


「くっ!」


アレックスがふたたび斬りかかる。


ガゼルがカウンターのパンチを繰り出す。


アレックスが殴られる。


「ぐあっ!?」


「ははは、弱えな! あまりに弱すぎて、眠たくなってきたぞ!」


「だ、黙れ!」


「ほら、頑張れよゴミックス君? そんなんじゃいつまで経っても当たらねーぞ?」


「なっ……私はゴミックスではない、アレックスだ!」


アレックスが剣を振るう。


ガゼルが避ける。

   

「アホックス君は、いつになったらオレに一発決められるんだ?」


「アホックスではない! ちゃんと私の名前を呼べ!」


「ちゃんと呼んでほしかったら、まともな剣を振りなさいよザコックス君? こんなショボイ剣技じゃ、一発たりとも当たらねーぞ?」


またアレックスが斬りかかる。


「ぐがっ!?」


アレックスが殴られる。


またアレックスが斬りかかる。


「うぐっ!?」


アレックスが殴られる。


その繰り返しだ。


最初に宣言したとおり、ガゼルは片手しか使っていない。


それでもアレックスが一方的にボコられる状態だ。


「くっ」


アレックスが打たれすぎて、膝をついた。


ガゼルが笑った。


「ぎゃははははは!! 雑魚すぎじゃねえか王子様ァ!? クランネルの王族ってのは、こんなカスばっかりなのかよ!?」


「貴様!!」


「手加減が片手だけってのも多すぎだったなァ!? こっからは指二本ゆびにほんだけで戦ってやるよ!!」


「なっ!!」


ガゼルは片手しか使わない。


しかも、さらに手加減を加えて、人差ひとさゆび中指なかゆびだけで戦い始めた。


アレックスが怒りで真っ赤になる。


「貴様、ナメるのも大概にしろ!」


アレックスが斬りかかった。


それを楽々らくらくとかわして、ガゼルが指で攻撃する。


「ぐっ!?」


指ではたく。


指で突く。


指で斬る。


「ぐはっ! がはっ!!?」


アレックスが、ガゼルの2本指に追い詰められる。


ガゼルはさらに笑った。


「ははははは!! 指2本でもダメか? じゃあ1本だ!!」


「なに!?」


指1本。


アレックス相手にはそれで十分だと、ガゼルが叫ぶ。


アレックスは、目まいがしそうなほどの怒りに包まれた。


しかし。


「がっ!? ぐはっ!? ぐふっ!!?」


ガゼルの1本指が、アレックスを殴る。


はたく。


突く。


指1本でのチョップが、まるでハンマーのごとき威力を秘めていた。


「あがあッ!!?」


頭を殴られたアレックスが、額から血を流す。


ガゼルは爆笑した。


「おいおいおいおい? どうしたよテメエ!? こっちはもう指1本しか使ってねえ。これ以上は手加減できねーぞ!?」


「くっ!!」


「こっちはよォ、相手が王子様だから、盛大に譲歩してやってんだぞ? 俺の忖度そんたくを無駄にしてんじゃねーよ!」


「これが忖度だと? 私をバカにしてるだけではないか!」


アレックスは憤慨ふんがいした。


ガゼルはケラケラと笑うばかりだ。

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