第6章225話:アレックス視点4

<アレックス視点>


アレックスは告げた。


「ではガゼル将軍? 私と正々堂々せいせいどうどうたる一騎打いっきうちをしてもらおう!」


その言葉に、ガゼルがニヤニヤと笑みを浮かべながら、目を細める。


「一騎打ち、ねぇ……?」


「ああ! 将軍というからには、それなりには強いのだろう? 私も強い。なぜなら私の適性職は【大剣術家だいけんじゅつか】だからだ!」


「大剣術家……! なるほどなるほど」


「ふふン、感心したか? クランネル王国でも、私の強さは広く認められている! 王国の騎士団長も、私のことを将来有望だとおっしゃってくれた!」


実は、その騎士団長は、ただ王子をヨイショするために世辞せじを言っただけなのだが……


アレックスはけていた。


「くくくっ、将来有望、ねぇ……?」


ガゼルは笑いがこらえきれなかった。


ガゼルの目から見て、アレックスはちっとも強そうには見えなかったからだ。


アレックスが虚勢きょせいを張っているか……


あるいは、己の実力を自覚できないバカであると、ガゼルは見抜いていた。


ガゼルは言った。


「話はわかった。テメエとの一騎打いっきうち、受けてやるよ」


「本当か!」


アレックスは不敵に笑った。


そんなアレックスにガゼルは告げる。


「ああ。寄ってたかって袋叩ふくろだたきはしょうに合わねえし……テメエみたいな雑魚は、オレ一人で十分だからな?」


「……何? 間違まちがいだろうか、いま、私のことを雑魚ざこばわりしたように聞こえたが?」


「ああ、正しくそう言ったぜ?」


「……! 貴様」


とアレックスはガゼルをにらむ。


「私をあなどっていると、後悔することになるぞ?」


とアレックスは強気つよきに言い放った。


ガゼルはニッと笑った。


「へえ、後悔するのか。そりゃ楽しみだなァ?」


そのガゼルの笑みは、凶悪さに満ちていた。


殺意と悪意を凝縮ぎょうしゅくしたような笑み。


濃厚な殺意の波動を感じ取って、アレックスはゾッとしてしまう。


「……ッ」


「んー? どうした?」


ガゼルは笑いながら、告げる。


「ははは、殺気を感じてビビッちまったか?」


さらにガゼルは言った。


「そう不安そうな顔をするな? ちゃんと手加減してやるよ!」


「……手加減?」


「ああ。オレは足で攻撃するの禁止、左腕も使うの禁止。片手だけで戦ってやるからよォ……雑魚は雑魚なりに足掻あがいてみな?」


「な、なんだと」


アレックスは顔をしかめる。


ガゼルは叫ぶように笑う。


「だってよォ! それぐらいの手加減がなきゃ勝負が成立しねえだろォ!? 本気で戦ったら、瞬殺しゅんさつしちまうからなァ!?」


「くっ……」


言いたい放題、罵倒ばとうしはじめたガゼルを、アレックスはにらみつける。




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