第6章224話:アレックス視点3

<アレックス視点>


その後。


アレックスは敵将てきしょうを探して、一人で戦場をまわった。


戦場において単独行動たんどくこうどうは危険である―――――


などという思考は、アレックスにはない。


ただただ、


「必ず、私が手柄をあげてみせる!」


心意気こころいきを燃やしていた。





やがて。


アレックスは崖をりられるくだざかを発見する。


そこを駆け下りて、地上へとたどりつく。


アレックスは周囲を見渡した。


少しひらけた地形である。


……と。


視界の右端にジルフィンドの兵団を発見する。


「おい!」


とアレックスは呼びかけた。


「ジルフィンドの者どもだな! 私と尋常に勝負せよ!」


とアレックスは続けて告げる。


アレックスの声に振り向いたジルフィンド兵たち。


一人、チャラついた格好をした男がいた。


その男が歩いてくる。


「あーん? 誰だテメエ? クランネル軍のもんか?」


「そうだ。私はクランネル王国おうこく第一王子だいいちおうじ、アレックスである!」


「……!?」


男は驚愕した。


男以外のジルフィンド兵たちも、愕然がくぜんと目を見開く。


「ひゃは―――――」


男は、笑った。


「ひゃはははははははは!! お、お、王子様だってェ!? テメエ、マジでいってんのかよ!?」


「ああ、本当だとも。私こそが、ミジェラ女王の息子であり、次期国王となる王太子おうたいしだ!」


「ぎゃはははははは!! あ、あぁっ、あははあっ、あひゃひゃひゃひゃ!! ふひゃあああああああ!!!」


男が爆笑して、笑い転げる。


あまりにひんのない笑い方であり、アレックスは思わず顔をしかめた。


笑いすぎて涙目なみだめになった男は、目元をぬぐいつつ言った。


「ひゃは、はは、くくくくくっ、すまんすまん。悪いな? あまりに面白すぎるギャグで、わらにそうになったわ」


「……ギャグではないのだが」


「く、くくくくっ、悪い悪い。そうだったな」


男は仕切しきなおしとばかりに、笑いをおさえてから、告げた。


「自己紹介しとくわ。オレはガゼルだ。ジルフィンド軍の将軍をやってる」


「……将軍、だと」


アレックスは目を見開く。


同時に、しめた、と思った。


ジルフィンドの将軍をれば、誰もが自分のことを賞賛しょうさんするに違いない。


そう思ったからだ。

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