第6章223話:アレックス視点2

<アレックス視点・続き>


そして。


ドン、と。


アレックスは、ネキアに体当たいあたりをおこなった。


「……え?」


いきなりのことで、ネキアは対応できず。


突き飛ばされたネキアは、崖の向こうへと身をおどらせる。


「あ――――ああああああぁぁぁぁぁっ!!?」


崖を転げ落ちていくネキア。


アレックスの後ろを歩いていた兵士たちが、呆然と立ち尽くした。


ネキアの女副官おんなふくかんが口を開く。


「な、で、殿下、何を!?」


「ふン。邪魔者じゃまものを排除しただけだ」


「邪魔者……っ」


「ヤツは私の監視役だったのだろう? 王族を監視するなど、無礼極ぶれいきわまる」


「だ、だから突き落としたのですか!? ネキア隊長を!?」


副官は、ほとんど怒りをぶつけるような物言いだった。


アレックスは顔をしかめる。


「なんだその態度は? 私のやりように文句でもあるのか!?」


「当たり前です!」


「貴様……不敬だぞ! この場で処刑してやろうか!?」


副官が、少しおびえた顔をした。


アレックスは鼻を鳴らしてから言った。


「これから私は、敵将てきしょうを討つために行動する。ネキア隊は、このまま私の傘下さんかに入れ」


「なっ!?」


「ともに敵将を討ち、武功ぶこうをあげよう! 私についてくれば、美味おいしい思いをさせてやるぞ!」


副官は、狂人を見るような目でアレックスを見つめた。


いや、副官だけでない。


一連のやりとりを見ていた兵士たちはみな、この王子は異常だと思った。


だから。


「失礼します!」


と副官が告げて、歩き出す。


「おい、どこへ行く!」


とアレックスが呼び止めようとした。


副官は宣言する。


「ネキア隊長を助けにいくんです!」


「なに? 貴様――――」


アレックスが何か言いかけたが、無視して副官は去っていった。


副官を追いかけるようにして、兵士たちもその場を去りはじめる。


「おい、貴様ら! 止まれ! おい!!」


誰もアレックスの言葉を聞かず、去っていった。


やがて残ったのはアレックス一人となる。


彼は一人、憤慨ふんがいしたようにつぶやく。


「くっ……王族の命令を聞かぬなど、無礼にもほどがある。まあ、そんなだから下級兵士かきゅうへいしなんだろうが」


そしてアレックスは、ひとり、敵将を討つために行動し始めるのだった。

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