第6章219話:ナナバール視点

<ナナバール視点>


ジルフィンド本陣。


天幕テントの中。


ナナバールたちのもとへ、伝令兵たちが次々とやってきていた。


報告がおこなわれる。




「ジルフィンド第五軍だいごぐん一部隊いちぶたいが、奇襲を受け、壊滅!」


「魔法銃撃隊によって、ジルフィンド第七軍が多大な被害を受けております!


「ジルフィンド第八軍、三班、四班が壊滅。五班についても、負傷者が多数! 援軍の要請が出ております!」




明るいしらせはない。


どれもこれも被害報告ばかり。


ナナバールは報告を聞きながら、こめかみに青筋を浮かべた。


「何が起こっている!!?」


怒声をあげるナナバール。


伝令兵の一人が答える。


「も、申し上げた通り、クランネル軍の魔法銃撃隊による攻撃を受けて――――」


「ああそれはわかった! だが何故、魔法銃撃隊と交戦しているんだ!? 奇襲とは何だ? どこから連中は現れた!? それを答えろ!」


怒鳴り声に、伝令兵はビビりながら述べる。


「ま、魔法銃撃隊は、フロヴィッツ峡谷に存在する抜け道を通って、奇襲をおこなっている模様です!」


「抜け道だと?」


「は、はい。どうやら洞穴どうけつや、表には見えない通路などが存在しているようで……」


「……!」


ナナバールは驚愕に目を見開く。


ヒズナル将軍が口を挟んで、尋ねた。


「ルチル・ミアストーンは、その通路の場所を把握しているというのか!?」


「ど、どうやらその様子です!」


伝令兵が答えた。


ナナバールもヒズナルも冷や汗をかいていた。


フロヴィッツ峡谷は、魔法銃を運用するには不向きな地形。


さらにナナバールが考えた天才的な配置によって、魔法銃を完封できるはずだった。


ところが……


ルチルは、隠し通路を利用することで、その不利を打ち破ろうとしている。


このままではジルフィンド軍は士気は大幅に下がり、やがて総崩そうくずれとなる。


フロヴィッツ草原でのいくさと同様に、大敗たいはいきっしかねない。


「さ、さらに、ルチル・ミアストーンは新型武器を投入した模様です!」


「な、なんだと」


ナナバールが青ざめた。


密偵みっていが持ち帰った情報によると、クランネル軍はソレを【魔法爆弾】と呼んでいたそうで」


「魔法爆弾……」


伝令兵が、爆弾の特徴を報告する。


ナナバールとヒズナルは戦慄せんりつした。

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