第6章217話:ジルフィンド兵の視点2

「な、なんだ……?」


女隊長は怪訝けげんそうな顔をする。


次の瞬間。


魔法爆弾が、激しい轟音ごうおんを立てて爆発した。


1つ爆発して、近くにいた兵士たちが吹き飛んだ。


異世界の兵士たちがはじめて目撃する爆弾。


魔法銃に並ぶ、凶悪な新型武器であった。


「……」


悪夢を見ているような気分だった。


2つ目の爆弾が爆発する。


続けざまに3つ目、4つ目も爆発し、そのたびに兵士の肉が、爆散ばくさんしていった。


女隊長のうえから砂と、肉片が、ざあざあと落ちてくる。


「はぁ……はぁ……」


呼吸が狂っていく。


「はぁはぁはぁはぁはあはあはあっ」


正しい呼吸の仕方を忘れ、過呼吸かこきゅうのように動悸どうきが乱れる。


正気を保てるはずがなかった。


女隊長は、発狂する。


「ああああああ、あああああああああああっ!!!」


伏せていたら爆発で吹き飛ばされると、乱れた精神の中でも理解できた。


だから立ち上がって逃げ出す。


他の兵士たちも同様だった。


隊長の命令などなくても、我先われさきにと逃げ出していた。


だが。


「―――――――――」


まるで狙い済ましたかのように。


ズダ。


ズダダダ。


ズダダダダダッ!!!


小康状態しょうこうじょうたいとなっていたはずの銃撃が、ふたたび激化した。


伏せるのをやめ、立ち上がったジルフィンド兵たちが、銃弾を浴びて、次々と倒れていく。


あちこちで爆発が起こり、砂と肉と爆風が押し寄せてくる。


「はは……」


女隊長は絶望に包まれながら、ただ笑う。


「地獄じゃないか、ここは」


そんな女隊長のこめかみに。


ズドンと。


銃弾が突き抜けていく。


女隊長は、まるで糸の切れた人形のように倒れた。


死にゆく彼女の耳には、ただ兵士の悲鳴ばかりが聞こえていた。

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