第6章216話:ジルフィンド兵の視点

<ジルフィンド視点>


魔法銃による突然の強襲きょうしゅう


激しい銃撃を食らったジルフィンド兵たちは、すぐに混乱状態となった。





「な、なんだ!?」


「うああああああああ!?」


「敵襲! 敵襲だァ!」


「なんか飛んできてんぞ!?」


「あっちからよ!」


「ああああああああぁ!!? 足が、オレの足がああああ!!」





側面からの集中砲火。


ルチルが指揮する銃撃隊は40名しかいないものの……


1秒間に2~3発も連射できるため、またたきをする間に100発以上の弾が飛んでくる。


しかもミスリルに傷をつけるほどの威力。


一般兵士が身につけた防具なんて、紙同然かみどうぜんだ。


盾で防ごうものなら、盾ごと吹っ飛ばされるような有様ありさまである。


「い、岩陰いわかげに隠れろ!」


と女隊長が叫んだ。


すると副官が言い返す。


「隠れるところがありません!」


「なんだと……!? くっ……!」


周囲には都合よく身を隠せる場所は存在しなかった。


逡巡しゅんじゅんしているあいだにも、銃弾が飛んできて、兵士たちの命を刈り取っていく。


「と、とにかく地面に伏せろ!!」


と女隊長がふたたび叫ぶ。


指示が聞こえた者たちは、慌てて地面に伏せた。


隊長自身も伏せる。


(これが……ルチルの魔法銃撃隊か!)


クランネル総大将であるルチル・ミアストーンが開発した新型武器――――魔法銃。


その存在を、軍のミーティングで知らされていたが……


まさかここまで凶悪な攻撃であるとは、想像できなかった。


伝聞で聞かされるのと、実際に体験するのでは、次元が違う。


(こんなの、反則だろうが! 立って逃げることも許されん。いったいどうすれば……)


立ち上がったら撃たれる。


這って逃げるしかないか?


しかし、逃げ切れるか?


女隊長は、だんだん追い詰められるような気分になっていく。


そのときだった。


「……?」


銃撃が少し落ち着いた。


代わりに、何かが飛んできた。


ルチル隊が、何かを放り投げてきたのだ。


丸い物体である。


その物体は、放物線を描いて、伏せたジルフィンド兵たちのあいだに落下する。


およそ5個か10個ほどだ。






実は、これはルチルが開発した新武器しんぶき――――爆弾である。


殺傷力を高めるために魔力を込めており、【魔法爆弾まほうばくだん】とルチルは名付けている。






ただしジルフィンド兵たちは、爆弾を見たことがなかった。


だから、それが何であるかがわからない。


わからないまま、投げられた魔法爆弾まほうばくだんをいぶかしげに見つめて……


次の瞬間。


ジルフィンド兵の目の前で、魔法爆弾が爆発した。

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