第6章215話:隠し通路

隊を率いて、私はフロヴィッツ峡谷を進む。


右も左も、崖だらけだ。


崖というほどではない大きさの岩石や突起も、たくさん存在している。


ゴツゴツした視界であり、緑は少ない。


そんな殺風景さっぷうけいの中を、私たちはひたすら進んでいく。


そして。


10分後。


私は最初の目標地点へとたどり着く。


「ここですわね」


眼前にそそり立つ岩壁。


エドゥアルトが尋ねてくる。


「たしか……フロヴィッツ峡谷には、たくさんの隠し通路があるんですよね?」


「ええ。ここがそうですわ」


ゲームでは、フロヴィッツ峡谷には無数の隠し通路が存在した。


そこを通ることで、近道ができたり、隠しアイテムを入手できたりした。


今回は隠しアイテムに用はない。


隠し通路たちは、戦争を有利に進めるための進軍経路しんぐんけいろとして使わせてもらう。


私は岩壁を調べた。


すると、大きな岩石に隠れる形で、洞穴ほらあなが存在していることがわかった。


「フランカ」


「はい!」


「この岩をどかしてください」


「了解です!」


フランカが巨岩に近づく。


自分の背丈よりもデカい岩であったが、フランカは難なく、押して退かした。


「ありがとうございます」


と私は礼を述べてから、ルチル隊のみんなに告げた。


「それではこれから、この洞穴に入りますわ。洞穴を抜けたら、おそらくすぐジルフィンド兵と遭遇するので、銃撃します。決して遅れないように」


すでにルチル隊には魔法銃を渡してある。


即、銃撃をおこなえる体制だ。


「さて、では入りますわよ」


私が一番に、洞穴ほらあなへと入る。


ランタンを取り出す。


このランタンには、火魔石が入ってある。


魔力を送り込むと、火魔石が光り、灯りがともる。


その灯りを頼りに洞穴を進んでいく。


やがて行き止まりに辿り着いた。


眼前には壁。


だが、これは壁ではなく、岩である。


私はその岩に両手をつき、押して、どかす。


人が通れる程度の隙間ができたら、顔だけ出して、外をのぞく。


(いるいる。ジルフィンド兵が)


距離にして150メートルぐらい先。


私たちの洞穴は、ちょうどジルフィンド兵の側面に位置している。


銃撃するには最高のポイントだ。


私は手信号てしんごうで背後のフランカやエドゥアルトに合図を送る。


フランカとエドゥアルトも、背後の兵士に手信号で合図をし、以後、リレー形式で後方まで命令を伝える。


さあ、準備は整った。


銃撃の開始だ。


「……!」


私は、洞穴から飛び出した。


岩壁に沿うようにまっすぐ走る。


私のあとを追いかけるようにして、フランカ、エドゥアルトが。


さらにルチル隊の兵士たちが洞穴から飛び出してきた。


兵士たちは素早く陣形を構築。


銃を構えた。


まだジルフィンド兵たちは、私たちの存在に気づいていない。


私は叫んだ。


斉射せいしゃなさい!」


直後。


魔法銃が一斉にを噴く。


ズダ。


ズダダ。


ズダダ、ズダダダダダッ!!!


ライフルから魔法弾が炸裂し、ジルフィンド兵に向かって飛んでいく。

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