第6章214話:峡谷

<ルチル視点>


二日後。


次なるいくさの準備を整え……


いよいよフロヴィッツ砦を出発する。


8000名による行軍こうぐん


ぐんぐん進む。


夕方。


フロヴィッツ峡谷きょうこくの入り口へ到着した。


この日は、もう日が暮れる。


陣地を張って、野営することにした。


同時に偵察隊ていさつたいによって、峡谷きょうこくの状況を視察させておく。






翌朝。


偵察隊から寄せられた情報を踏まえつつ、フロヴィッツ峡谷へと入る。


――――フロヴィッツ峡谷。


巨大な崖があちこちに立ち並んでいた。


崖と崖の合間には、通路が走っている。


この通路は入り組んでおり、迷路のようになっている。


広い通路もあれば、狭い通路もある。


また、ところどころに広場のような、広い空間もあった。


(ゲームと地形は変わらないみたいだね)


と私は確認しながら、兵隊を進めた。


途中。


ひときわ巨大な崖を発見する。


(あれは、ブレコウォール……)


ブレコウォール。


300メートルも高さがある、超巨大ちょうきょだいな岩壁だ。


ゲームではナナバールが、源義経みなもとのよしつねのごとく、鵯越ひよどりごえ逆落さかおとしをおこなった崖である。


おそらくゲームと同じく、今回ナナバールは、あのブレコウォールを駆け下りてくるだろう。


(要チェックポイントだね……)


と私はインプットした。







さて……


いよいよ敵の陣地が近づいてきた。


これ以上進んだら、敵と遭遇しはじめるであろう地点だ。


私はベアール将軍に告げる。


「では、本軍の指揮はよろしくお願いいたしますわ。わたくしは、魔法銃撃隊をひきいて、予定通り作戦を実行します」


「はっ! お気をつけて!」


とベアール将軍が言ってきた。


私はきびすを返し、魔法銃撃隊のもとへ。


シャルティアさんとホーヴァンさんの前にやってきた私は、二人に命令する。


「シャルティア副隊長」


「はっ!」


「ホーヴァン補佐官」


「はい!」


「お二人には、予定通り、魔法銃撃隊を30名ずつ指揮していただきますわ。今からわたくしと別行動となります。問題ありませんわね?」


今回は魔法銃撃隊100人全員を、私が指揮しない。


私と、


シャルティアさんと、


ホーヴァンさんとで、


3つの部隊に分ける。


別行動を取りながら、敵を銃撃するプランだ。


「はっ! ご期待に添えるよう、全力を尽くします!」


とシャルティアさん。


「必ず、作戦を達成してご覧に入れましょう!」


とホーヴァンさん。


気合いは十分のようだ。


私は言った。


「期待していますわ。頑張ってください」


シャルティアさんとホーヴァンさんが、自分に割り当てられた部隊を率いて動き始める。


私も、自分の隊を前に、命令した。


「それでは作戦を開始いたしますわ! わたくしに続きなさい」


私が歩き出す。


脇を固めるように、エドゥアルトとフランカ。


その背後に、40名の魔法銃撃隊が、続いた。

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