第6章210話:次の作戦

「崖の上に昇って、上から銃弾を撃つというのは、ダメなのですか?」


とベアール将軍が尋ねてきた。


私は答える。


「理論的には可能ですが、まだ崖上がけうえから銃を撃つ訓練はしておりませんの」


「……なるほど」


とベアール将軍は納得してから、聞いてきた。


「なら、次のいくさでは、魔法銃は使い物にならないと考えたほうがいいということですか」


「いいえ。そういうわけではありませんわ」


と私は答える。


さらに続けた。


「要は使いどころの問題です。魔法銃撃隊を効果的に配置して、相手が銃弾を避けられない位置から、狙撃すればいいのですわ」


その言葉に、ベアールは難色なんしょくを示す。


「……まあ、おっしゃることはわかるのですが、現実的には難しいでしょう。なにしろ次はナナバールも、魔法銃への対策を取ってくるはずですから」


フロヴィッツ草原の戦いでは、魔法銃のデビュー戦だった。


ゆえにジルフィンド側に魔法銃の情報がなく、ナナバールも対応できなかった。


ところが次のいくさでは、既に魔法銃の存在が、ジルフィンドに知られている。


ナナバールはおそらく、魔法銃の特性を理解したうえで、対策をこうじてくるだろう。


ベアール将軍は言う。


「ナナバールほどの天才ならば、魔法銃を完封かんぷうしてくる配置を考えるはずです」


「そうですわね」


「いかがするのですか? ナナバールの上をいく妙案みょうあんがおありとか?」


「まさか。私がナナバールの頭脳に勝てるわけがありませんわ」


と素直に認める私。


ベアール将軍は眉をひそめる。


「では、どうするのです?」


「安心してください。私には、私だけが知るとっておきの情報がありますの」


「とっておきの情報?」


とっておきの情報。


それはもちろんゲーム知識である。


「地図をご覧ください。実はフロヴィッツ峡谷には、多数の隠し通路があるのですわ―――――」


私は、ナナバールを出し抜く作戦を語るのだった。


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