第6章208話:退場

さらにベアール将軍は述べる。


「つまり、私は女王陛下のご命令に従って、アレックス殿下を王族としてではなく、一兵卒いっぺいそつとして扱わなければならない」


「な、なんだと!? 王族を、そこらの下級兵士かきゅうへいしと同等に扱うつもりか!?」


「ああ、そうだとも。陛下のご命令なのだから当然だ」


ベアール将軍の答えに、アレックスは歯ぎしりをする。


ベアール将軍が言った。


「アレックス殿下……いや、アレックス君。君には作戦会議に参加する資格はない。それにふさわしい階級もなければ実力もない」


「ぐぬぬぬぬ!!」


「ゆえに繰り返させてもらうが、出て行ってもらおう。しばらく砦の掃除か、体力訓練でもしているといい」


顔を真っ赤にするアレックス。


ベアール将軍は、近くに立っていた大隊長に命じた。


「おい大隊長。つまみだせ」


「は、はい」


大隊長が返事をしてから、アレックスの肩に触れる。


「さ、触るな! 無礼者ぶれいものが!」


アレックスがその手を振り払う。


ベアール将軍がテーブルを立ち上がった。


「アレックス君」


「……っ!」


ベアール将軍が歩き、アレックスの前に立つ。


ベアール将軍は、2メートル近い長身だ。


目の前に立たれる威圧感いあつかんは尋常じゃないものがある。


ベアール将軍が、言い聞かせるように告げた。


「これは遊びじゃないのだよ。我々は戦争をしているのだ。君のくだらない会議ごっこに付き合う暇はない」


「か、会議ごっこだと!?」


「ああ。それとも何か? さきほどの、作戦とも言いがたい稚拙ちせつな案が、採用されるとでも思ったのか? 本気でそう思っているなら、君は軍を舐めすぎだ」


「くっ……!!」


「さ。ご退場たいじょうねがおう。あまりごねるようなら、痛い思いをすることになるぞ」


アレックスは拳をにぎり締める。


だが、ベアール将軍に刃向はむかう勇気はないのか、吐き捨てるように答えた。


「ああ! わかった、出ていく!」


さらにアレックスは告げた。


「私の優秀さがわからぬ無能どもが! あとで私の作戦を採用しなかったこと、後悔することになるぞ!!」


そんな捨てゼリフを吐いて、アレックスは会議室を出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る