第6章206話:アレックスの作戦

翌日。


晴れ。


昼。


砦の最上階さいじょうかい


作戦会議室さくせんかいぎしつにて。


私たちは、次なる戦いに向けて、作戦会議をおこなっていたのだが……


「なるほど。これが次の戦場――――フロヴィッツ峡谷きょうこくの地図か。では私が、最高の作戦を考えてやろう!」


と言い出したアレックス。


「ふむ、なるほどな。こういう戦場になっているのか。なら――――」


とアレックスが、いきなり作戦のプレゼンを始める。


アレックスによる突然のプレゼンテーションに、会議に参加していた一同は困惑した。


しかし。


相手は王族。


誰も止めることはできない。


唯一、プレゼンを止められる立場にあったのは私であり、会議の参加者さんかしゃたちも、ちらちらと私に視線を送って


『あの王子を止めてくれ!』


懇願こんがんするような顔を向けてきたが。


私は無視した。


アレックスを止めなかった。


なぜか?


(アレックスのバカさを、証明するチャンスだもんね!!)


王国有数おうこくゆうすうの戦士たちが集まる作戦会議。


アレックスに作戦など提案できるわけがない。


もしもアレックスの作戦を採用しようものなら、次のいくさで歴史的な大敗たいはいきっしたとしても、驚かない。


しかし。


『アレックスはバカなんで、みんなアレックスの作戦は無視してね!』


と私が言って回るのは、感じが悪いではないか。


私はみんなに嫌なヤツだと思われたくない。


なので、アレックスには自爆じばくしてもらうことにした。


私が何をしなくても、アレックス自身が、己のバカさ加減を証明すればよい。


実際、放っておいても、アレックスはおろかな作戦を語り続け、会議の参加者さんかしゃ辟易へきえきさせている。


狙い通りである!


「――――というわけで、このように攻めと守りを固めれば、ジルフィンド軍を打ち破ることができる! 私の作戦は以上だ!」


とアレックスは満足げにプレゼンを終えた。


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