第6章204話:来訪2

私たちはフロヴィッツとりでに戻る。


砦の庭。


そこに一台の高級馬車こうきゅうばしゃが存在した。


ちょうどアレックスが高級馬車から降りてくるところだった。


アレックスは、私を見るなり、近づいてきた。


アレックスの背後には護衛らしき者たちが4名ほど控えている。


私の前で立ち止まるアレックス。


私は尋ねた。


「アレックス……どうしてここに?」


「ふン。お前が無様ぶざまな戦いをしているだろうと思って、加勢かせいに来てやったのだ」


「ええと……つまり、戦争に参加しにきたということですの?」


「その通りだ」


とアレックスが肯定する。


おおかた、女王陛下から『戦争経験を積んでこい』とでも命じられたのだろう。


で……アレックスがフロヴィッツ砦にやってきたわけだ。


アレックスは言う。


「私が参戦してやると言っているのだぞ? ありがたく思え」


いや、ありがたくねーよ。


私は盛大にため息をつきたくなった。


「はぁ……」


おっと、実際にため息をついてしまった。


私は慌てて呼吸をコントロールする。


アレックスは顔をしかめつつも、言った。


「私は疲れている。長く、馬車に乗っていたからな」


「そうですの」


「ああ。だから部屋を用意しろ。王族にふさわしい最高級の部屋をな!」


尊大そんだい物言ものいい。


砦の独房どくぼうにでもぶちこんでやろうか?


……と思ったが、まあ、王族を無碍むげに扱うわけにはいかない。


しょうがないな。


私の部屋の、次ぐらいに立派な個室を用意してやろう。


私は部下に指示して、アレックスの部屋を用意するのだった。




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