第6章200話:ヒズナルたちの視点

<ヒズナル・ナナバール視点>


ジルフィンド本軍。


伝令兵が、報告をする。


その報告内容に、ヒズナルが叫んだ。


「な、なに!? クランネルが全軍突撃を開始しただと!!?」


冷や汗を浮かべるヒズナル。


ナナバールも険しい面持ちで告げる。


「このタイミングでの全軍突撃……。決着をつける気で来ていますね」


「どういうことだナナバール! いったい戦況はどうなっているのだ!? まるでわからんぞ! さっきから何が起こっているのだ!?」


ヒズナルは、戦場の状況が理解できずに混乱していた。


ただそんなヒズナルにも、ジルフィンド軍が劣勢であることは、直感的に理解できていた。


だから焦っているのだ。


このままでは取り返しのつかないことになるのではないかと。


「落ち着いて聞いてください」


とナナバールは前置きしてから、告げた。


「まずジルフィンド第一軍はもう壊滅していると思われます」


「な、なんだと!?」


「ジルフィンド第一軍は、横の森から伏兵ふくへいが現れ、激しい攻撃を受けたことで、弱体化したのでしょう」


その伏兵とは、もちろんルチル隊のことである。


「おそらくカラバーン将軍も、その際に討伐されています」


「なっ!? カラバーン将軍が!?」


「はい。指揮官であるカラバーン将軍が戦死したことで、ジルフィンド第一軍は統制が取れなくなり、崩壊――――全滅したのでしょう」


ナナバールの見解に、ヒズナルは叫ぶように言い返した。


「バカな!! 伏兵といっても少数のはずだろう!? なのに、精強なるジルフィンド第一軍が全滅させられたというのか!?」


「……おそらく伏兵は、なんらかの新型武器を用いたのでしょう。相当強力な武器だと思われます」


ナナバールは実際に、その新型武器を目にしたわけではないが……確信していた。


ルチル隊は何らかの新型武器を使ったのだと。


そして、その予想は当たっている。


ナナバールが示唆した新型武器とは【魔法銃】のことなのだから。


ナナバールは続けて言った。


「そして、ジルフィンド第一軍が全滅した後、クランネル軍と伏兵たちは、ぐるりと回りこむ形で、ジルフィンド第二軍を包囲したと推測されます」


「包囲……だと!?」


クランネル軍とルチル隊によるトライアングルの包囲――――


ヒズナルは、ようやく戦況を理解できたことで、わなわなと震えた。


絶体絶命と呼ぶべき状態に追い込まれているのだということを。


「ジルフィンド第二軍を援護すべきだ!」


とヒズナルは叫んだが……


ナナバールは思っていた。


(もう……遅い)


援護などしても、遅い。


手遅れであると。

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