第6章198話:全軍突撃の命令

やがて。


私たちは、ジルフィンド第三軍だいさんぐんの兵士たちの合間を切り抜け……


クランネル軍の本軍ほんじんへと戻ってきた。


ベアール将軍が私たちの姿を見て、目を見開く。


「これは驚きましたな。敵軍てきぐんのどなかから、ルチル様が現れるとは」


「ジルフィンド第三軍だいさんぐんを切り抜けてきたのですわ」


そう答えるとベアール将軍が苦笑する。


「無茶をなさりますな。もしも総大将そうだいしょうであるあなたがられてはどうするのです?」


と尋ねてきた。


私は答えた。


「討ち取られなければ問題ナシ、ですわね」


この異世界では、大将みずから敵陣に突っ込むのは珍しいことではない。


本来、総大将とは後ろでふんぞり返って、部下にアゴで命令するのが仕事であるが……


この異世界に限っては、最前線さいぜんせんで戦う大将や、武勲ぶくんのために無茶をする大将も美徳とされる。


もちろん、生きて帰ってくることが前提であるが。


敵大将てきたいしょうであるヒズナルも、バカみたいに突っ込んできてくれれば早いんだけどね)


ゲームにおいて、ヒズナルが突っ込んでくるという設定は無かった。


期待はできまい。


「ははは、頼もしい大将ですな」


とベアール将軍は笑った。


私は尋ねた。


「しかし、武勇ぶゆうを誇りたくて敵軍を突破してきたわけではありませんわ」


「ほう。では何故?」


「命令を伝えにきましたの」


「命令?」


ベアール将軍が首をかしげる。


私は言った。


「全軍を突撃させてください」


「!!」


ベアール将軍が目を見開く。


私は解説する。


「現在、クランネル第一軍、クランネル第二軍、ルチル隊の3者によって、ジルフィンド第二軍を取り囲んでおりますの。さながら三角形を描くように」


「……! なるほど」


「ジルフィンド第二軍だいにぐんを、完全に壊滅させるためには、あと一手が必要ですわ。その一手とは――――孤立させること」


現在、ジルフィンド第二軍はトライアングルを描く形で包囲されているものの。


まだジルフィンド第三軍からの援護を受けられる位置にいる。


この援護ができないようにして、ジルフィンド第二軍を孤立させること―――――


そして孤立無援こりつむえんになったジルフィンド第二軍を、袋叩きにすること―――――


これが最後の一手である。


「そのための全軍突撃ぜんぐんとつげきですわ。できればジルフィンド第三軍の行動を邪魔するように、突撃させてもらえるとありがたいですわ」


――――ちなみに、私たちが敵軍を突破してくる途中、ジルフィンド第三軍には銃弾を浴びせまくった。


だから現在のジルフィンド第三軍は、既にかなりの混乱状態にある。


ここにクランネル軍の全軍突撃を食らわせれば、ジルフィンド第三軍は崩壊する可能性が高い。


「承知いたしました。ではそのように」


「はい。お願いいたしますわね」


用が済んだので、私は来た道を引き返す。


ひとまずルチル隊のもとへと向かうことにした。





―――――――――――

あとがき:

全軍突撃の命令をなぜ出したのか、については以下の図で解説しております↓

https://kakuyomu.jp/users/teru0024a/news/16818093073319985323






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る