第6章195話:他者視点2

<三人称視点>


大きく激動げきどうしていく戦況せんきょう


しかしその動きが把握できず混乱しているのは、末端まったんの隊長や兵士だけではなかった。


ベアール将軍も同様である。


彼女は小高い丘のうえから戦場を眺めながら、困惑していた。


(なんだ、この状況は……?)


当初、想定していた盤面とは大きく異なる展開。


現在戦場はおかしなことになっている。


本来、戦うべきではない軍団同士がぶつかっている。


兵士たちの配置が狂っている。


だが、それは偶然そうなったわけではないように思えた。


(ルチル様、あなたが画策かくさくしたことか?)


ベアール将軍は、そう推測する。


総司令官そうしれいかんであるルーガが抜擢ばってきした副司令ふくしれい・ルチル。


彼女が土壇場どたんばで作戦を変更し、狙ってこの状況を作り出したのだろう。


(だとすれば、恐ろしいな……。ジルフィンド第二軍だいにぐんの統制が、壊れてきている)


現在、ジルフィンド第二軍は多大な混乱状態にある。


このままいけば9000名からなるジルフィンド第二軍は、崩壊するかもしれない。


そうなれば、このフロヴィッツ草原での戦いは、クランネル軍の大勝利に終わるだろう。








一方、


ジルフィンド本軍。


ヒズナル将軍とナナバール将軍は、現状について困惑していた。


「何が起こっている!?」


ヒズナル将軍が怒鳴るように叫んだ。


伝令兵からは絶えず情報が寄せられてきている。


しかしその情報から、戦況がいまひとつ理解できず、焦りといらだちを感じているのだ。


だが、ナナバールにもその気持ちは共感できた。


――――ここが正念場しょうねんばだという実感がある。


なのに戦場の状況がさっぱり理解できないのだ。


ナナバールは思考する。


南側みなみがわの森から、クランネル軍の伏兵ふくへいが発生した。そこまではわかる)


しかし、と彼は思った。


(そこからの動きが、てんでわからない)


ありとあらゆるパターンを解析できるナナバールの頭脳。


しかし、彼には欠落している情報があった。


それは魔法銃。


ルチルが開発した新型武器の存在だ。


その殲滅力せんめつりょく制圧力せいあつりょくのすさまじさを、ナナバールは認知できていなかった。


だから現状が把握できずにいるのだ。


(何か手を打たないとまずい……でも、どんな判断をすればいい?)


ナナバールはもどかしさと、いらだちを感じる。


そうしているあいだにも、刻々こくこくと戦況は変わっていく。

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