第6章193話:包囲

<三人称視点>


いくさが始まってから2時間が経つ。


一部を除き、ここまではジルフィンド軍が圧倒的な戦果を収めていた。


特に、戦争の開始直後……


激しいぶつかりあいが生じていた以下の戦いは、ジルフィンド側の圧倒的優勢で進んでいた。





クランネル第一軍・第二軍 vs ジルフィンド第一軍


クランネル第三軍 vs ジルフィンド第二軍





ジルフィンド第一軍だいいちぐん、およびジルフィンド第二軍だいにぐんは、最も精鋭と兵数が集まる軍団。


普通に戦えば、クランネル軍に負けることはない。


事実、ここまではジルフィンド軍が圧倒劇あっとうげきを繰り広げていた。


ところが……


戦争開始より2時間が過ぎた、現在。


ジルフィンド第二軍が、なぜか劣勢に転じ始めた。


同時に兵隊たちのあいだで大きな混乱が生じていた。


「な、なんだよ……」


兵士の一人がつぶやく。


「あっちもこっちも敵だらけじゃねえか? いったいどうなってるんだ?」


――――自分たちがいつの間にか包囲されている。


そう兵士たちが気づき始めた。


でもそれは有り得ないことだった。


なぜなら位置的に、


ジルフィンド第二軍の右側には、ジルフィンド第三軍がいて。


ジルフィンド第二軍の左側には、ジルフィンド第一軍がいるのだ。


つまりジルフィンド第二軍は、左右を味方に挟まれている状態。


だから敵に囲まれるなんてことが……有り得るわけがない。


有り得ない、はずなのに。


実際、周囲は敵だらけ。


ジルフィンド第二軍は、クランネル軍に包囲されている。


激しい混乱と困惑が、ジルフィンド兵たちを包み込みはじめた。








この包囲網ほういもうは、ルチルが作戦によって作りだしたものである。


そしてここから、クランネル軍の快進撃が始まるのだった。

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