第6章192話:その後

そのとき。


「ルチル様!」


エドゥアルトが戻ってきた。


彼は言う。


「さすがルチル様です! カラバーン将軍を倒したんですね?」


「はい。そちらも終わったようですわね?」


そう問いかけるとエドゥアルトがうなずいた。


「カラバーン将軍の護衛は全滅させました。ご覧の通りです」


エドゥアルトが示唆した先を見つめると、確かに、カラバーン将軍の部下たちが血に沈んでいた。


私は言った。


「よくやりました。さすがわたくしの専属騎士ですわね」


「いいえ、ルチル様のバフポーションのおかげです」


まあ、それは大きいだろう。


バフポーションを飲んだ状態のエドゥアルトは、屈指の戦闘能力を誇るはずだからだ。


私は命じた。


「では、ルチル隊の皆を呼んできてもらえますか?」


「承知いたしました」


エドゥアルトがルチル隊のもとへ走っていく。


ややあって、ルチル隊がやってきた。


シャルティアさんが言った。


「まさか……あのカラバーン将軍を、一騎打ちにて討伐なされるとは」


「ルチル様は、本当にすごいお方ですね」


とホーヴァンさんも、そう称賛してきた。


私は言った。


「ありがとうございます。ああ、そうそう。フランカ?」


「はい?」


「一つ、作業をお願いしたいのですが――――」


私はフランカにとある作業を命じる。


フランカが了解した。


「わかりました」


私の命令に応じて、フランカは旗などに使う槍を一本、アイテムバッグから取り出す。


さらにカラバーン将軍の首を拾い……


その槍の先端に、カラバーン将軍の首を突き刺した。


フランカが報告してくる。


「できました」


「ご苦労様ですわ」


と私はねぎらう。


カラバーン将軍の首級くびを突き刺した槍。


あとで、この首をジルフィンド軍に見せびらかすつもりだ。


剛獣ごうじゅう】とうたわれる第一将軍カラバーンの戦死は、ジルフィンド軍に多大な衝撃を与える。


そうしてジルフィンド軍の士気を引き下げるのが、私の狙いである。


「……さて、今後の方針ですが、まず300メートルほど前進しようかと思いますわ。そこであなたがた魔法銃撃隊まほうじゅうげきたいには、西に前進していただきます」


そこで一拍置いてから、さらに私は告げた。


「そして私と、エドゥアルトと、フランカは、いくらかの兵を連れて、北西方向を進むことにいたしますわ」


「え? ええと、つまり、二手ふたてに分かれるということでしょうか?」


とシャルティアさんと確認してきた。


「はい」


と私は肯定する。


シャルティアさんたちは西へ。


私たちは北西へ。


それぞれ違う進路へ進む……という命令だ。


「なお魔法銃撃隊の指揮は、シャルティア副隊長……あなたに任せます」


「はっ! 承知いたしました!」


とシャルティアさんが返事をした。


シャルティアさんは指揮能力が高い。


全面的に部下を任せても大丈夫だろう。


ホーヴァンさんが尋ねてくる。


「しかし、ルチル様たちが北西方向に進むということは、これまた敵の分厚いところにぶつかりますね。何かお考えがあってのことなのでしょうか?」


私が北西方向を進むと、ジルフィンドの第二軍をすっとばして第三軍とぶつかることになる。


ジルフィンドの第二軍を避けて、第三軍を攻撃することには、もちろん意味がある。


ただ、ここで作戦の内容をつぶさに説明するのは困難だ。


「まあ、いくさが終わったあとにでも解説いたしますわ」


と私は答えておいた。

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