第6章190話:将軍2

「……!」


そのとき。


ルチル隊の一人が、カラバーン将軍に向かって発砲した。


その銃撃が、カラバーンの馬に命中する。


馬が卒倒そっとうする。


カラバーンは落馬らくばして地面を転がるも、すぐさま立ち上がって走り出した。


「我はジルフィンド第一軍・将軍・カラバーンである!!」


高らかに告げるカラバーン将軍。


伏兵ふくへいちょうよ、いざ尋常に勝負せよ!」


そんなカラバーンに向かって、ふたたびルチル隊の一人が発砲。


しかし。


カラバーンは大剣をふるって、銃弾を切り裂いた。


あいつ、やりおる。


「こんな飛び道具で、我を討ち取れると思うたか!!」


ふむ。


どうやら銃弾は通用しないようだ。


さすがは将軍といったところか。


しょうがない。


アレは手ずから殺すしかないね。


私はアイテムバッグからバフポーション2つを取り出した。


うち1つをエドゥアルトに手渡す。


そのときホーヴァンさんが尋ねてきた。


「ルチル様、いかがされますか?」


「カラバーン将軍は、わたくしが仕留めますわ」


「え?」


「エドゥアルト以外は、ここで待機していなさい」


ホーヴァンさんが困惑するのをよそに、私はバフポーションを飲み干した。


「エドゥアルト、ついてきなさい」


「はっ!」


とエドゥアルトが了解し、彼もバフポーションを飲んだ。


私は駆け出す。


「ちょっ……ルチル様!!?」


とホーヴァンさんが慌てふためく声が、背後から聞こえたが無視した。


カラバーン将軍のもとへ、私とエドゥアルトは疾駆しっくしていく。


やがてカラバーン将軍の姿がすぐ眼前まで迫る。


私は、視線は前方に向けながら、背後のエドゥアルトに指示を出す。


「わたくしがカラバーンを倒しますわ! エドゥアルトはうしろの手下どもを叩いてください」


「はっ!」


エドゥアルトが返事をする。


私はカラバーン将軍と15メートルの距離をあけて立ち止まる。


カラバーン将軍もまた、その場で立ち止まる。


私とカラバーン将軍の一騎打いっきうち。


エドゥアルトが私の横を駆け抜けていき、カラバーン将軍の手下たちと切りあいを始めた。


カラバーン将軍は、告げる。


「ふむ……まさか伏兵を指揮していたのはルチル・ミアストーンだったか! しかも、御身おんみがみずから我の前に出てくるとは、驚いたぞ!」


「あなたぐらいであれば、1対1でも叩けると思いましたのよ、カラバーン将軍?」


「それは慢心だな、ミアストーンの姫君。なにしろ我は強い」


カラバーン将軍が、もてあそぶように大剣を振るった。


演武えんぶのごとく滑らかな剣さばきだ。


「【剛獣ごうじゅう】とうたわれたけん貴殿きでんにお見せして進ぜよう」


ライオンのような赤髪。


ライオンのような容貌。


岩よりも重そうな大剣。


【剛獣】――――カラバーン将軍が、大地を蹴る。


鈍重そうな見た目なのに、驚くほど滑らかに、かつ、力強い踏み込みだ。


カラバーン将軍が、一瞬で15メートルもの間合いを潰し、接近してくる。


振るわれる大剣。


「……!」


私は、その大剣を避けることなく、剣の腹で受けた。


「なに!?」


まさか受け止められるとは思っていなかったのだろう、カラバーン将軍が驚愕きょうがくする。

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