第6章189話:将軍

最初の一斉射撃は成功に終わった。


そのことが確認できて、私は満足する。


「それにしても……」


と私はひそかに思った。


魔法銃の制圧力が高い。


想定していたより、ずっと。


これほどの殲滅力せんめつりょくがあるなら、もう少し大胆な作戦に出てもいいかもしれない。


―――よし。


私は、当初の作戦を少し変更して……


たったいま思い描いたプランを実行することにする。


ちょうどそのときシャルティアさんが尋ねてきた。


「ルチル様、ここからの作戦は……?」


「兵士たちには半円陣はんえんじんになっていただきますわ」


私は答える。


半円陣とは、私が兵士たちに練習させた陣形の一つ。


魔法銃撃隊まほうじゅうげきたいを半円の形を描くように並べる。


180度の方位に、銃撃をおこなう陣形だ。


横一列よこいちれつに並んで射撃する面制圧めんせいあつの陣形に比べると、より広い範囲に銃弾をぶっぱなせるのが半円陣のメリットである。


「そして、敵を銃撃しながら前進しましょう。魔法銃がこれだけ機能するなら、敵軍の奥深くに攻め込んでも大丈夫でしょうから」


「承知いたしました!」


とシャルティアさんが返事をしてから、ルチル隊へと命令を飛ばす。


兵士たちが半円陣の陣形を取る。


「前進せよ!」


とシャルティアさんの命令。


兵士たちが銃を持ったまま、駆け足で前進を開始する。






そこからはルーティンのごとき作業だ。


前進して、


立ち止まって、


射撃。


また前進して。


立ち止まって。


射撃。


――――それをひたすら流れ作業のごとく繰り返す。


700メートルも離れた位置から敵を攻撃できる魔法銃。


異世界における一般的な遠距離攻撃は、弓や魔法だが……


魔法銃は、その間合いの外から狙撃が可能であり、しかも威力が高い。


ほとんど一方的に相手を撃ち殺せる、超強力な遠距離武器。


それを半円陣はんえんじんの陣形で炸裂させる殲滅力せんめつりょくは尋常ならざるものがある。


事実、この銃撃作戦により、ジルフィンド第一軍・後方部隊はあっという間に壊滅した。


(よし……)


と私は思った。


(このまま、ジルフィンド第二軍の後ろに回りこんで、背後から狙撃を―――――)


そのときだった。


「ルチル様! あちらを!」


ふいにエドゥアルトが叫んだ。


彼の示唆した先に、私は視線を向ける。


草原の先から、こちらに向かって駆けてくる騎兵きへいの姿があった。


私は双眼鏡をのぞいて確認する。


「あれは……ジルフィンド第一軍の将軍ですわね」


ジルフィンド第一軍を指揮する将軍。


カラバーン将軍である。


ライオンのたてがみのような赤髪、ライオンのような顔。


身長195cm。


筋骨隆々きんこつりゅうりゅうの肉体を持つ。


メラメラと燃えるような真紅しんく漆黒しっこくの色をした鎧に身を包んでいる。


右腕に持つのは大剣。


あおい毛並みを持つ馬に乗って、走ってきていた。


その背後には4名ほど、同じように馬に乗った護衛がついてきている。


(自軍の後方部隊が壊滅したことに気づいて、みずから私たちを潰しに来たといったところかな)


と私は推測する。


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