第6章187話:他者視点

<ジルフィンド第一軍・後方の兵士視点>


ジルフィンド第一軍・後方部隊。


そこに控える兵士たちは、弛緩しかんしていた。


「なんか、つまんねえよな」


と、一人の兵士が言った。


丸坊主の兵士である。


彼は続けた。


「どうせ前衛だけで楽勝だし。後方の俺らの出番なんてねえだろ」


「そう言うなよ。ラクに勝てるならいいことだろ」


と別の兵士が言う。


角刈りの兵士であった。


すると丸坊主の兵士が返す。


「だけどよ。活躍する気満々で、こんな他国までやって来たんだぜ? なのに後方で待機って……やっぱりつまんねえよ」


とダルそうに言ってから、丸坊主の兵士はさらに続ける。


「あー、なんか伏兵とか出てこねえかな? そしたら俺が、英雄ばりにカッコよく斬り殺してやるのによ!」


と丸坊主の兵士はヘラヘラ笑う。


そのときだった。


ズバン。


ズババババン!


と。


謎の音が、どこか遠くから鳴り響いた。


直後。


「あがッ!?」


兵士の悲鳴が上がる。


周囲の兵士の何人かが、その場に倒れる。


「な、なんだ? 攻撃か!?」


丸坊主まるぼうずの兵士が驚きながら、音がしたほうに視線を向ける。


……誰もいない?


おかしい。


たしかにこっちから音が聞こえるのに。


遠くに森があるが……それだけだ。


敵兵てきへいとおぼしき姿はない。


しかしなく音が鳴り響いている。


「あ、ぐわっ!?」


「な、何が起こって……あがぁっ!?」


「あ、ああああああ!? 俺の、俺の脚がッ!!?」


兵士たちが次々と倒れていく。


(ふ、伏兵ふくへい……なのか?)


丸坊主の兵士は困惑する。


自分たちは明らかに攻撃を受けている。


でも、敵の姿が見えない。


音だけが聞こえる。


(まさか……)


丸坊主の兵士は戦慄せんりつした。


あの森から……あんな遠くにある森の中から、こちらを攻撃しているのか?


馬鹿な。


こんな長距離を飛ばせる武器があるなんて……信じられない。


ただ、現実に、次々と味方がやられていく。


丸坊主の兵士は、足が震えた。


「に、逃げねえと……!」


そう思って、彼は森とは逆の方向へ走り出そうとする。


だが、その瞬間。


「あ―――――」


腹に、激しい熱を感じた。


丸坊主の兵士は、おそるおそる自分の腹部ふくぶを見下ろす。


服に穴が空いていた。


そこから血が噴き出している。


「ぐふっ……」


撃たれたのだ、と気づいた瞬間。


丸坊主の兵士は、一気に意識が遠のき、崩れるように倒れた。

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