第6章179話:砦

ん……


そこで私は、フロヴィッツという言葉が引っかかった。


どこで聞いた名前なんだよな。


うーん……。


(あ……!)


と、私は声を漏らした。


思い出した。


これ、ゲームでやったやつだ!


ゲームでも、クランネル王国vsジルフィンド公国の戦争は勃発していた。


そこでクランネル王国軍が取ったのが、二つの砦を同時に守る二正面作戦にしょうめんさくせんだったはずだ。


しかも、ゲーム主人公が担当したのは南――――フロヴィッツ砦。


私と同じである。


(だったら……)


この戦争。


楽勝なんじゃないだろうか?


だって、何度もやったもん! フロヴィッツの戦い。


敵の動きとかは、完璧に頭に入っている。


「お前に授ける兵数へいすう、部隊長、それから物資などの資料はコレだ」


と、父上が用紙を取り出した。


「まず兵の数だが―――――」


と父上が説明していく。


私は説明を聞きながら、戦争に勝つためのプランを、頭に中に描いていった。







10日後。


私は【フロヴィッツとりで】に到着していた。


山と草原に囲まれた場所に立つ、寂しい砦だ。


フロヴィッツ砦は、周囲を外壁がいへきに囲まれており……


内部には庭園と居館きょかんがある。


庭園部分には、


兵士の訓練場、


馬小屋うまごや


籠城ろうじょうした際の食糧確保のための穀物倉庫こくもつそうこ


兵糧、


菜園、


せいパン場、


井戸、


ニワトリの飼育場などがあった。






そして居館きょかん


居館は、石造りの無骨な城砦じょうさいであり……


その内部はほとんどが戦争のための設備である。


私はエドゥアルトやフランカとともに、居館・最上階の作戦会議室さくせんかいぎしつにいた。


真ん中に楕円形だえんけいのテーブルがあり……。


テーブルよこには、地図や作戦指示書さくせんしじしょなどが貼られた掲示板。


壁際に置かれた鎧。


壁に展示された戦斧せんおう


垂れ下がるクランネル王国旗おうこくき


槍立やりたてにはたくさんの槍が設置されている。


(同じ会議室でも、商会の会議室とは全然違うなぁ……)


と私は苦笑する。


さて。


現在、作戦会議室では、戦争の現状説明がおこなわれていた。


伝令兵でんれいへいの情報によると、8万だったジルフィンド軍は現在、7万へと数を減らしたようです」


説明をするのは軍の大隊長である。


大隊長は続けた。


「減った1万の内訳うちわけですが、推定3000名ほどが戦死、2000名ほどが負傷、残り5000名ほどは、制圧した都市に残してきたものと思われます」


「国境付近の諸都市しょとしは落とされたのか?」


そう尋ねたのはベアール。


ボリューム感のあるロングヘアの青髪。


紅い瞳。


身長2メートル近い女性軍人であり、眼帯をつけている。


階級は第四将軍だいよんしょうぐん


ちなみにベアールさんは、平民の出。


実力と才能を発揮し、完全な叩き上げで将軍の座まで上り詰めた、才気煥発さいきかんぱつの女性だ。


「はい。国境付近にある5つの都市は全て陥落しております」


「ふむ、なるほど」


「現在、ジルフィンド7万の軍勢は、3万を北の砦アーガルシュへ。4万を、こちらの砦へと侵攻させています」


フロヴィッツ砦に向かっている敵軍が、4万か。


とんでもない大軍である。

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